世界を知れば日本が見える 第47回

サウナが根付く国の人々は「控えめでシャイ」。大統領も認める、日本人とフィンランド人の意外な親和性

サウナの本場であるフィンランドでは、人々はサウナとどのような関わりを持っているのか。その文化から見えてきた、日本とフィンランドで共通する「国民性」とは何か。

ロンナ島のサウナ
ロンナ島のサウナ(筆者撮影)
「ととのう」というのを経験したことがあるだろうか。サウナで汗を出して爽快感や幸福感を得ることを指す。作法としては、サウナで汗を流して水風呂に入り、またサウナで汗を出すというのを繰り返すことで、「ととのう」という状態になるといわれている。

日本でサウナは広く普及している。最近では漫画やドラマなどが人気を後押ししており、2021年の「新語・流行語大賞」では、「ととのう」がノミネートされているほどだ。

温泉施設や健康ランド、スポーツジムなどでもよく見かけるが、2023年1月に日本サウナ総研が実施した「日本のサウナ実態調査2023」によれば、今では1680万人以上がサウナを利用しているという。また、日本にはサウナ施設が1万2000カ所あるとされる。

「サウナ」はフィンランド語

この「サウナ」という言葉はフィンランド語だ。北欧のフィンランドでは、熱気浴や蒸気浴として国民の生活に深く根付いていて、人口約550万人のフィンランド国内にあるサウナの数は320万カ所にもなる。2020年にはユネスコの無形文化遺産にも登録された。

筆者もサウナはよく利用している。爽快感に加え、サウナの独特の閉鎖空間で気分転換しながら考え事もできるからだ。そんな筆者は先日、安全保障関連の取材でフィンランドを訪れた。そしてその合間にサウナ取材も敢行。そこで今回は、本場フィンランドのサウナ事情をお伝えしたい。

フィンランドでは、ホテルの部屋にサウナが併設

フィンランドのホテルの部屋にあるサウナ
フィンランドで宿泊したホテルの部屋にあるサウナ(筆者撮影)
まず、これはフィンランド以外では考えにくいが、宿泊したホテルには部屋にサウナが設置されていた。シャワールームの横に、ガラス張りで個人用(2人用)のサウナ室がある。

入るときは、まずサウナルームのストーブに加熱スイッチを入れ、サウナストーン(火成岩)を熱する。しばらく待ってから水をためた桶を持ってサウナルームに入り、サウナストーンに水をかけて熱い蒸気を発生させて温度を高めていく。

そしてある程度汗をかいたら、隣のシャワールームで水を浴び、またサウナに戻る。ホテルの部屋でできるので、誰にも気兼ねなく何度でもサウナを楽しめる。

「サウナ島」といわれるロンナ島へ

ただせっかくサウナの本場であるフィンランドに来たら、地元のサウナも味わいたい。ということで、首都ヘルシンキのマーケットから出航している水上バスで「サウナ島」として知られるロンナ島に向かった。
水上バスでロンナ島へ
水上バスでロンナ島へ(筆者撮影)
水上バスではバルト海を約20分ほど航行すると島に到着。料金は往復で、1人8.5ユーロだ。島にはパブリックのサウナがあり、利用料は20ユーロ。日本と違うのは、水着を着用してから利用し、男女混浴というところだ。

フロントでチェックインを済ますと、サウナの建物に向かい、男女別のロッカールームで着替え、いざサウナに。12人が入れるロフト型のサウナが2つあり、フィンランド人らと一緒に汗を流す。ここのサウナは小さな島ということもあり、水風呂の代わりにバルト海に入って体を冷やす。筆者が訪れたときは、従業員が「今日のバルト海の水温は11度です」と教えてくれた。

そして、海とサウナを往復して「ととのう」のである。
ロンナ島の入り口
ロンナ島の入り口(筆者撮影)
ロンナ島には、サウナの後に食事ができる自然派レストランがある。そこで、サウナでととのった状態のまま、ワインを飲みながら食事を楽しむことができる。
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サウナを愛する、日本人とフィンランド人の「共通点」
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