第96回アカデミー賞で国際長編映画賞と音響賞を受賞した『関心領域』を見る前の6つの「心構え」を解説しましょう。※画像出典:(C)Two Wolves Films Limited, Extreme Emotions BIS Limited, Soft Money LLC and Channel Four Television Corporation 2023. All Rights Reserved.
『関心領域』 5月24日(金)より新宿ピカデリー、TOHO シネマズ シャンテほか全国公開 配給:ハピネットファントム・スタジオ (C)Two Wolves Films Limited, Extreme Emotions BIS Limited, Soft Money LLC and Channel Four Television Corporation 2023. All Rights Reserved.
映画『関心領域』が2024年5月24日より劇場公開されます。
本作のメインで展開しているのは「家族の日常」です。子どもたちは川で遊び、夫は家で何やらお偉いさんと会議をしていて、妻は年老いた母親と庭の造園について話し合ったり、使用人は家事をしていたりと、とても平和でほのぼのとしている……ように見えます。
(C)Two Wolves Films Limited, Extreme Emotions BIS Limited, Soft Money LLC and Channel Four Television Corporation 2023. All Rights Reserved.
しかし……何やら「重い」音がずっと鳴り響いており、時おり「銃声」や「うめき声」や「悲鳴」が聞こえてきます。さらに、子どもたちがプールで遊んでいるその後ろでは、はっきりと「煙」がもくもくと上がっているのです。
その理由は言わずもがな。平和な家族の日常のその隣で、毎日のようにユダヤ人が銃や炎により虐殺されているからです。夫がお偉いさんと話しているのは「焼却炉」の話だったりしますし、さらに川では「人骨」と思しきものが見つかり、子どもたちはすぐに川からあがるように言われ、その後に徹底的に「洗浄」されたりと、そのおぞましい事実を示す出来事がいくつかあります。
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本作には直接的な残酷描写はほぼ皆無であり、日本でのレーティングはG(全年齢)指定です。それでもとてつもなくグロテスクに感じられる、なんなら気分が悪くなるほどの映画体験ができるのは、そうした「大量虐殺の事実」と「どこにでもありそうなホームドラマ」を同時に見せられ、そこにすさまじいギャップがあるからでしょう。
そのホームドラマの中でも特に印象に残るのは、妻が夫から急な転勤を聞かされて、「ここは夢に見た暮らしなの」「あなただけが転勤して。私は子どもとここに残る」などと告げること。隣で起こっていることを認識しているはずなのに、そう言って(思えて)しまえることに、戦慄したのです。
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さらにショックを受けたのは、「作物と花」。「楽園のよう」とも言われるその庭で「雑草を取り払う」のは民族浄化や選民思想のメタファーに思えましたし、その作物や花の「養分」が何かと考えると……さらに背筋が凍ることでしょう。