ヒナタカの雑食系映画論 第92回

『トラペジウム』がキラキラしているだけじゃない、新感覚のアイドル映画になった7つの理由

「乃木坂46」の1期生・高山一実による小説をアニメ映画化した『トラペジウム』が5月10日より公開中。本作はいい意味でキラキラしているだけじゃない、新感覚のアイドル映画であり、「主人公の性格が悪い」ことも大きな魅力。(※画像出典:(C)2024「トラペジウム」製作委員会)

トラペジウム
『トラペジウム』5月10日(金)全国ロードショー (C)2024「トラペジウム」製作委員会
5月10日よりアニメ映画『トラペジウム』が公開中。原作はアイドルグループ「乃木坂46」の1期生・高山一実による、累計発行部数30万部を達成した大ヒット小説です。

1:アイドルの経験者でないと書けない、『【推しの子】』ファンにも推薦したい内容に

まず、本作は「アイドルの経験者でないと書けない話」だと思える内容に仕上がっています。何しろ、キラキラしているだけじゃない、むしろ「邪道」とさえ言える、だけど「リアル」でもある、アイドルを目指す少女の「生き様」が描かれた映画だったのですから。
 

アニメとしてのクオリティも確かなもの。制作スタジオは『ぼっち・ざ・ろっく!』(TOKYO MXほか)や『SPY×FAMILY』(テレビ東京系ほか)などの人気作品を手掛けるスタジオCloverWorks。音楽がかかる(歌い出す)シーンでの鳥肌の立つような感動は、2023年に公開され絶賛の嵐となった『BLUE GIANT』(現在はAmazonプライムビデオやNetflixで見放題配信中)にも引けをとりません。

新進気鋭の声優・結川あさきや、ボーイズグループ「JO1」の木全翔也らボイスキャストの演技も見事。MAISONdes(メゾン・デ)とVtuberの星街すいせいによる主題歌もバッチリとハマっています。
 

94分というタイトな上映時間でまとまった青春物語としての完成度も高く、アイドルが好きな若い人はもちろん、そうではない人にも大推薦。同じく、アイドルの世界を暗い側面も含めて描いた漫画およびアニメ『【推しの子】』(TOKYO MXほか)が大ヒットをしている今、より幅広い層に届いてほしい内容です。

予備知識がいっさいなくても楽しめる作品ではありますが、ここからは内容に触れつつ、『トラペジウム』がなぜここまでの「新感覚のアイドル映画」かつ、「胸をえぐるような作品」になったのかの理由を解説していきましょう。

2:“東西南北“から美少女を探す「仲間集め」の物語

あらすじはシンプル。女子高生が「“東西南北“の美少女を集めて、アイドルグループを結成する野望」に執念を燃やすというものです。
トラペジウム
(C)2024「トラペジウム」製作委員会
彼女は半島地域の東に位置する高校に通っており、他の3つの方角の高校へと足を運び、かわいい女の子と友達になろうと画策します。その「仲間集め」をする前半部分は『七人の侍』チックでもあり、個性豊かな(またはアクが強い?)かわいいキャラクターたちは、とっても魅力的に映ることでしょう。

また、「印象のいいボランティア活動をしておく」といった主人公の計画は、アイドルを目指すにしては周りくどくて不確かで、「なんでそんな方法を?」「1人でオーディションに挑めばいいじゃん」と思うかもしれませんが、それに対しての明確な答えが用意されていることも見どころだったりします。
トラペジウム
(C)2024「トラペジウム」製作委員会
少女たちが友達を作り、青春を謳歌(おうか)し、同じ目標に向かって突き進む。それだけなら平和で朗らかな、それはそれで癒されるガールズムービーになりそうなところですが……そこには「不穏さ」も見え隠れしているのです。
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主人公の性格が悪い。だけど……
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