
1:アイドルの経験者でないと書けない、『【推しの子】』ファンにも推薦したい内容に
まず、本作は「アイドルの経験者でないと書けない話」だと思える内容に仕上がっています。何しろ、キラキラしているだけじゃない、むしろ「邪道」とさえ言える、だけど「リアル」でもある、アイドルを目指す少女の「生き様」が描かれた映画だったのですから。アニメとしてのクオリティも確かなもの。制作スタジオは『ぼっち・ざ・ろっく!』(TOKYO MXほか)や『SPY×FAMILY』(テレビ東京系ほか)などの人気作品を手掛けるスタジオCloverWorks。音楽がかかる(歌い出す)シーンでの鳥肌の立つような感動は、2023年に公開され絶賛の嵐となった『BLUE GIANT』(現在はAmazonプライムビデオやNetflixで見放題配信中)にも引けをとりません。
新進気鋭の声優・結川あさきや、ボーイズグループ「JO1」の木全翔也らボイスキャストの演技も見事。MAISONdes(メゾン・デ)とVtuberの星街すいせいによる主題歌もバッチリとハマっています。
94分というタイトな上映時間でまとまった青春物語としての完成度も高く、アイドルが好きな若い人はもちろん、そうではない人にも大推薦。同じく、アイドルの世界を暗い側面も含めて描いた漫画およびアニメ『【推しの子】』(TOKYO MXほか)が大ヒットをしている今、より幅広い層に届いてほしい内容です。
予備知識がいっさいなくても楽しめる作品ではありますが、ここからは内容に触れつつ、『トラペジウム』がなぜここまでの「新感覚のアイドル映画」かつ、「胸をえぐるような作品」になったのかの理由を解説していきましょう。
2:“東西南北“から美少女を探す「仲間集め」の物語
あらすじはシンプル。女子高生が「“東西南北“の美少女を集めて、アイドルグループを結成する野望」に執念を燃やすというものです。
また、「印象のいいボランティア活動をしておく」といった主人公の計画は、アイドルを目指すにしては周りくどくて不確かで、「なんでそんな方法を?」「1人でオーディションに挑めばいいじゃん」と思うかもしれませんが、それに対しての明確な答えが用意されていることも見どころだったりします。
