さて、塾、専門家の分析結果もほぼ出そろったところで、まず全体を振り返ってみることにしましょう。
受験者数は微減、しかし受験率は過去最高に
2024年の首都圏の受験者数は、前年より200人減らし5万2400人でした。東京、神奈川、千葉、埼玉の4都県の小学6年生の人口が約5300人減少することもあり、これまで9年連続で増加を続けてきた中学入試の受験者数も、さすがに減るのではと言われてはいましたが、減少幅は予想より少なかっただけでなく、受験率は18.1%と過去最高となりました。(受験者数、受験率は首都圏模試センター調べ)小学生の子どもの数は減っているのに、受験率は増加。もしかすると、首都圏においては、もはや中学受験はブームではなく、選択肢の1つとして定着し始めているのかもしれません。
この傾向について専門家の間で言われているのは、受験生を持つ保護者の価値観の変化と入試の多様化による裾野の広がりです。
実際、2024年の入試では、偏差値上位校よりも、偏差値中位校から下の層の学校で受験者数の増加が目立ちました。それを「弱気受験」と呼ぶ記事もありますが、筆者は必ずしもそうではないのではと思っています。その理由として、最近は中学受験のスタイルも多様化しているからです。
そのスタイルとは、主に以下の3つです。
1. 従来通り小学4年生からしっかり進学塾に通って4科受験で難関校を目指す層
2. 塾には通っているが、偏差値重視ではなくわが子にあった学校を選びたいという層
3. 公立中高一貫校との併願や新タイプ入試を活用して中学受験をする。志望校に行けなかったら公立でいいと割り切っているライトな受験をする層
首都圏模試センターの北一成 教育研究所長も、昨今の中学受験者数を押し上げているボリュームゾーンは2で、3も増えていると言います。そんな動向を反映して、中堅校と言われる学校の受験者数が増えているのではないでしょうか。
15年前のピーク時は4科入試がほとんどだったのと違い、入試自体が多様化し、2科目あるいは得意科目1科目だけでも挑戦できる入試、英語入試、作文と面接、プレゼンやワークショップ型など教科学習以外の能力を測る入試もあります。そうした動きとともに、受験生を持つ保護者の思考も変わってきているのです。
「仕方ないから偏差値下げる」は学校にも失礼
筆者の周りでも、初めから2の考え方をする人が多くなっている印象ですが、中には1でやり始めたけれど、塾の課題をこなせずに途中で個別指導塾などに転塾し、4科目から2科目に減らして、入れそうな学校を選ぶというパターンも多いです。そういう人の中には、途中でさまざまな葛藤があったのでしょうが、「仕方なく偏差値を下げた」という言い方をする人が多いのが気になります。筆者はそういう言い方は、お子さんにも合格をくださった学校にもとても失礼なことだと思うからです。
同じ受験をするなら、お子さんがどれだけ頑張ったか、そのプロセスを見てあげてほしいし、受験する学校をリスペクトする気持ちを持ってほしいと思います。だって、入学したら6年間過ごすことになる学校なのですから。
そのためには、やはり学校選びは重要です。特に中学受験において、学校選びはほぼ親の仕事になります。(もちろん最終的にはお子さんの意向を大事にすることが大切ですが)
ですから今中学受験を考えている人は、ぜひもう一度、お子さんにどんな環境を与えたくて受験をするのかを考えてみてほしいと思います。