テーマは中国の文学者・魯迅の詩集からインスパイア
ADの2人が注目したのは日本にもゆかりの深い中国の文学者・魯迅(ろじん)。テーマの「野草」は魯迅の詩集「野草」(1927年刊行)からとっています。
約100年前、時代の波に翻弄された魯迅は、絶望の中に小さな希望を見いだす自らの生き方を、もろくて無防備で、しかし同時にたくましく生き延びる力を持つ野の草にたとえました。詩集には1人1人の主体性が尊重される社会の実現に向けた魯迅の願いが込められています。それは現在でもなお、色あせないメッセージを私たちに教えてくれます。
「野草:いま、ここで生きてる」をテーマとした同展は、魯迅を出発点としながら1960年代の学生運動や1989年の東西冷戦の集結など、今日の息苦しさを生む原因となり、かつ世界のいろいろな地域で共鳴して起きた出来事をたどります。展示を通して、1人1人が未来を生き抜くために、希望を見いだす場となることを目指しています。
全5会場、7つの章で構成
同展は7つの章で構成されます。現在を生きる私たちの暮らしの縮図ともいえる「いま、ここで生きてる」から始まり、6つの章へと誘います。
「わたしの解放」(ギャラリー2、ギャラリー5)、「すべての河」(別会場)で紹介される作家たちの作品や活動には、社会的なルールの中で生きる彼らが想像力によってその制約を乗り越えていこうとするエネルギーに満ちています。
「流れと岩」(ギャラリー6)、「鏡との対話」(ギャラリー1)、「密林の火」(ギャラリー3、ギャラリー4)の章では100年の時間の流れの中で紡がれてきた歴史と作家個人の人生の接点が示されていきます。
「苦悶の象徴」(ギャラリー7)は、現在の現実を映す最初の「いま、ここで生きてる」の章とは対照的に、目覚めた個人の内面世界を示すものともいえます。