子どもの保険はお金になる?
会費ゼロ、筆者は悪くないと思うのです。ひとたび会費を集めれば会員に収支を報告する責任が生じ、役員さんたちは総会開催などを求められますし、また「お金が集まるからには使わねば」ということで、必要かどうかを考えずに事業が継続される傾向も感じます。
お金をかけなくても、できることはたくさんあるでしょう。どうしても必要な時はその都度集めるか、投げ銭のような本当の寄付(自動加入で徴収した会費による「寄付」ではなく)を集める仕組みができたらいいのでは、と思うのですが。
PTAだけでなく、P連(PTAのネットワーク組織)も同様です。都道府県や政令市のP連、日P(日本PTA全国協議会)など従来型の大きな組織は特に、保護者や教職員→各PTA→P連という流れで、かなりの額の分担金を集めています。
しかも、都道府県や政令市のP連は「安全会」「互助会」など別団体を設けて保険事業を手掛けていることが多く、特別会計として何千万円ものお金をもっていることが珍しくありません。一部の団体では、億単位にのぼることもあります。
保険事業の収益だけで、もう十分過ぎるお金があるのだから、せめて分担金をとるのをやめては? と思っていたところ、気になる情報が。
2023年1月に東京都PTA協議会(都P)の当時の役員が設立した「一般社団法人 全国PTA連絡協議会」(全P)は会費ゼロで運営しており、この2024年春から保険事業もスタートするとのこと。
なお都Pは2023年度から、都Pの会員かどうかにかかわらず、都内の全小学校と小中一貫校の中学校などのPTAを対象に各種サービスを提供しています。特に「Zoomライセンス事業」「Wi-Fiルータープラン」といったサービスは全国から多数問い合わせがあったため、東京都以外のPTAにもこれらのサービスを提供できるよう、全Pを設立したといいます。
保険事業を始めた経緯について、理事らに聞かせてもらいました。
互助会から助成金を受け取らないことに決めた
まず知りたいのは、なぜ都Pは、全Pが契約者となる保険事業を新たに始める必要があったのか、という点です。他の都道府県や政令市のP連と同様に、東京都にも30年以上前から「互助会」が存在し、保険事業を手掛けてきました。その収益があったよね、と思ったのですが、筆者の想像とはちょっと違ったようです。東京都の互助会は、都PのOBやOGが役員となって運営しており、現役保護者とは世代が大きく異なります。事務所は都Pと同じビルの隣の部屋にありますが、組織や会計は完全に分かれています。都Pも互助会から毎年活動資金(助成金)を受け取ってはいたものの、保険事業の収益全体は把握していません。互助会の収支は、都Pを含め、どこにも公開されていないのです。
都Pが保険事業を始めたのには、いくつかのきっかけがありました。長年続いてきた互助会のやり方に違和感を持っており、賛同できないと感じていたことも、大きな理由だったとのこと。
都Pの理事らは何年も前から互助会に改善を要望し、話し合いを続けてきましたが、応じてはもらえませんでした。そこで最終的に互助会からの助成は受けないことに決めたそう。
「では今後、都Pの運営をどうやっていくのか。都Pは会員制度をやめているので、会費(分担金)もありませんし、互助会からの助成金も入ってこなくなる。企業の協賛金はあるものの、それだけで運営していくのは厳しいことから、今回新たに始める補償制度の制度運営費の一部を活動資金として、組織運営を行っていきます」(都P代表理事 岡部健作さん)
ふむふむ、ちょっとややこしい話です。
2024年度から、全Pが始める保険は、3種類あります。
1.(保護者向け)園児・児童・生徒総合補償制度
2.(PTA向け)PTA総合補償制度
3.(PTA向け)個人情報漏えい補償制度
1の「園児・児童・生徒総合補償制度」は希望する保護者のみが入るもので、一般的に加入率は1割前後と聞きます。2の「PTA総合補償制度」と3の「個人情報漏えい補償制度」はPTA向けの保険です。後者(3「個人情報~」)はもともと互助会では扱いがなく、都Pで2023年度から扱っていたものだそう。
全Pはこれらの補償制度から「事務手数料」や「制度運営費」を受け取り、都Pの活動資金としても活用します。
一方、互助会もこれまで通り保険事業を続けますから、東京都の小中学校の保護者は今後、互助会の保険と全Pの保険(「東京都PTA協議会プラン」)という2つの選択肢をもつことになるわけです。
なお、これらの保険は、全Pに登録すれば全国のP連やPTA、保護者が申込み可能とのことです。