どうにもならないことがあっても、それでも……
前述した通り、『君は放課後インソムニア』の主人公である中見は「みんなの期待に応えられなかった」こともあって、「頑張ってどうにもできない」「いつもこうなんだ、順調なことも最後に必ず台なしになる」などとと絶望的な言葉も告げていたこともありました。もちろん、物語は中見に絶望させたままにはさせません。「不眠症という同じ悩みを持つ2人が出会った」ことに限らず、「その時にはタイミングが合わなかったり、望んだ結果にならなかったりしたとしても、いつかきっといい巡り合わせや出来事がある」という希望をも、『君は放課後インソムニア』の物語は提示しているのです。
当事者ではない筆者が言うのはおこがましいですし、そこまで楽観的になれるはずもないことを前提として、その『君は放課後インソムニア』にある精神性は、現実の震災で大きな苦しみを受けている人々にとって、少しでも心を軽くしてくれるものでもあると信じています。
なお、原作者であるオジロマコトは、今回の震災を受けて『君は放課後インソムニア』の公式X(旧Twitter)にコメントを掲載。同アカウントでは地震災害義援金窓口などの情報を発信していますので、こちらもぜひチェックしていただきたいです。
『探偵!ナイトスクープ』での話題も!
最後に余談ですが、漫画『君は放課後インソムニア』は、関西の人気テレビ番組『探偵!ナイトスクープ』(ABC/テレビ朝日系)で、「主人公のモデルは自分ではないかと確かめてほしい」という依頼が取り上げられ、依頼者と探偵が作者であるオジロマコトの自宅を訪問し、真相を聞いたこともありました。その結果は、これから見る人のために秘密にしておきますが、それもまた『君は放課後インソムニア』がリアルな若者の悩みと青春模様に向き合っていた作品であることを証明したかのようでもあったのです。こちらの放送回はNetflixで見ることができますよ。
この記事の筆者:ヒナタカ プロフィール
All About 映画ガイド。雑食系映画ライターとして「ねとらぼ」「CINEMAS+」「女子SPA!」など複数のメディアで執筆中。作品の解説や考察、特定のジャンルのまとめ記事を担当。2022年「All About Red Ball Award」のNEWS部門を受賞。