ヒナタカの雑食系映画論 第64回

能登半島地震が起こった今こそ知ってほしい『君は放課後インソムニア』の魅力。舞台は石川県七尾市

令和6年能登半島地震のために、今なお苦境に立たされている人が多くいらっしゃいます。ここでは石川県七尾市を舞台にした『君は放課後インソムニア』を紹介しましょう。※サムネイル画像:実写映画『君は放課後インソムニア』ティザーポスターより

猫が放し飼いになっている有名なゲームセンターも

そんな『君は放課後インソムニア』のメインの舞台である高校は石川県立七尾高等学校をモデルとしており、そのほかにも七尾市の有名スポットが登場します。中でも目立つのは「ゲームセンターベティ」でしょう。

七尾市に実在する同ゲームセンターは、「beatmania IIDX」や「maimai」といった音楽ゲームが充実しており「音ゲーの聖地」と呼ばれているほか、店舗内で猫が放し飼いにされていることも話題を集めた有名店です。

『君は放課後インソムニア』の劇中で同店の店長として働く、天文部のOBである小柄な女性・白丸先輩は、一見するとぶっきらぼうですが、恋バナにウブなところがかわいらしかったりもする、とてもいい人なのです。
 

白丸先輩は、気ままな1人暮らしをしながら(決して順風満帆とはいえない)経営をしている様も含めて、とても魅力的。彼女のアドバイスが、天文部の活動にどう影響していくかも、物語の魅力になっています。
 

そして、現実のゲームセンターベティは能登半島地震のために店舗とゲームの筐体が甚大な被害を受けており、現在は営業を休止しています。幸いにして猫たちは無事だったのことですが、店長の悲痛な声、支援への感謝の言葉が投稿されていますので、ぜひ読んでみてほしいです。

実写映画でクライマックスとなった「真脇遺跡」

もう1つ、重要なスポットは能登町にある「真脇遺跡」。実写映画版の本編映像も公開されています。

中見と曲は天文部としての活動実績を作るため、天体写真のコンテストでの受賞を目指し合宿もしており、その撮影場所の「ゴール」として2人で決めたのが真脇遺跡でした。そこは、縄文時代前期からある遺跡で、2人はその長い時の流れに思いをはせて、自分たちの未来も話し合うのです。

実写映画ではクライマックスになっている同シーンは、劇中でも屈指の美しく尊いものでした。原作漫画やテレビアニメ版と見比べてみるのもいいでしょう。

そのほか、御祓川(みそぎがわ)にかかる「七つの橋」や、レトロな喫茶店「自家焙煎珈琲 中央茶廊」なども登場します。中央茶廊もやはり店舗内が大きな被害を受けたものの、原作者のオジロマコトなどによる色紙は無事だった様子。こちらもぜひチェックしてみてください。

実写映画をイチオシしたい理由

『君は放課後インソムニア』は、漫画とテレビアニメ版も素晴らしい作品であることを前提として、筆者個人はやはり実写映画版をおすすめしたいです。

その理由は、夜の街並みときらめく星空などの、心から美しいと思える撮影の素晴らしさ。ヒーリング効果抜群の音楽とのシンクロ具合も絶品で、ずっと「浸りたくなる」魅力があったのです。

俳優たちの「今しかない」魅力を切り取っているのも、実写映画ならではの大きな魅力。純朴な青年を演じた奥平大兼が心から愛おしく思えますし、原作そのままのオーバーオールのファッションもとても似合う森七菜もかわいらしいですし、クラスメイトを演じた俳優でファッションモデルの安斉星来のかっこよさにもほれぼれしました。
 
その実写映画版では、林間学校のエピソードがカットされていることなど、原作ファンからの賛否を呼んだポイントもあるものの、筆者個人としては前述した真脇遺跡のシーンをクライマックスに据えた1本の映画作品として、英断といえる取捨選択もできていたと思います。ラストの落としどころも好みは分かれるかもしれませんが、個人的には愛おしいキャラクターの「これから」にも思いをはせることができ、心地いい余韻に浸れたので大好きです。
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