「裏付けが弱い」として名誉毀損が認められたケース
2018年8月、『週刊新潮』はお笑いコンビ・爆笑問題の太田光さんが日本大学へ裏口入学していたとの記事を出した。記事の内容は、太田さんの裏口入学に関与したと自称する経営コンサルタントからの話を基に、その経営コンサルタントが太田さんの父から裏口入学を依頼され、日大の関係者と共に太田さんが裏口入学を行ったとするものであったが、太田さんの所属事務所は疑惑を全面的に否定。X(旧Twitter)で「訴えます」と宣言した。この裁判で、裁判所は『週刊新潮』による太田さんへの名誉毀損を認めた。
尾崎弁護士「『週刊新潮』側は、経営コンサルタントの話を裏付ける根拠として、(1)経営コンサルタントが太田さんの父の名刺を持っていたこと、(2)太田さんの学生時代の友人が、太田さんは四則演算ができないくらい学力が低かったと供述していること、などを主張しましたが、裁判所はそれだけでは裏付けが不十分だとして、名誉毀損を認めるに至りました」
名誉毀損の裁判では、やはり十分な裏付けの証拠があるのかどうかが、大きなポイントとなるようだ。
密室での出来事は、どう判断されるのか
前述した、山口さんが伊藤さんを名誉毀損で訴えた裁判だが、 尾崎弁護士によると一部「裏付けの証拠が弱い」と判断された部分があったという。尾崎弁護士「意識を失った伊藤さんに対して性的行為をしたという点について名誉毀損は認められませんでしたが、伊藤さんが山口さんに『デートレイプドラッグを混入されたと思う』と世間に訴えた点については、裁判所は山口さんに対する名誉毀損を一部認めました。伊藤さんは、自身が酒に強い体質であることや、当時の症状がデートレイプドラッグを飲んだ場合の症状に酷似していたことを主張しましたが、裁判所はデートレイプドラッグを混入されたことを裏付ける根拠として弱いと判断したのです」
今回の松本さんのケースを振り返ってみると、現在報道されているのは、女性側から「ホテル内で性加害をされた」という女性側の供述のみ。松本さん側は一貫して「事実無根」としている。
それを裏付けるような証拠や、第三者からの供述は、今後出てくるのだろうか。裁判に注目したい。
この記事の筆者:毒島 サチコ プロフィール
ライター・インタビュアー。緻密な当事者インタビューや体験談、その背景にひそむ社会問題などを切り口に、複数のWebメディアやファッション誌でコラム、リポート、インタビュー、エッセイ記事などを担当。
取材協力:尾崎聖弥 プロフィール
第一東京弁護士会。エンターテインメント・ロイヤーズ・ネットワーク所属。企業に対するコンプライアンス研修などを担当している。