さらに2024年1月8日、「裁判に注力したい」として、松本さんが芸能活動を休止する旨を発表。同日、松本さん自身もX(旧Twitter)を更新し、「事実無根なので闘いまーす」と表明している。
裁判の争点になり得る“真実を裏付ける証拠”とは何か
今後、裁判ではどのような点が争われるのだろうか。エンターテインメント関連の法務に詳しい尾崎聖弥弁護士によると、「記事の内容が真実であることの証明ができなければ、『週刊文春』は名誉毀損にあたる可能性がある」と言う。一方で、『週刊文春』側が、記事の内容が真実であることを裏付ける証拠を集めることができれば、名誉毀損と認められない可能性もある。
この“真実を裏付ける証拠”とは具体的にどのようなものだろうか。過去の名誉毀損の裁判例を振り返りながら、今回のケースを見ていきたい。
名誉毀損が退けられたケース
過去にも、松本さんのケース同様、性的行為を強要されたと女性が告発したことに対し、男性側が事実無根を主張して名誉毀損の裁判を起こしたケースがあった。2017年5月、『週刊新潮』(新潮社)は、ジャーナリストの伊藤詩織さんが、元TBS記者で報道番組などにも出演していた山口敬之さんと飲食店で食事をしている途中で意識を失い、意識が戻った際には山口さんにホテルで性行為をされていたなどと報道した。
伊藤さん自身も実名での記者会見や、本を出版するなどして山口さんからの性被害を広く訴え、大きな話題に。一方、山口さんは、伊藤さんの主張を全面的に否定。伊藤さんが山口さんに対して裁判を起こしたのに対抗して、「社会的信用を奪われた」として、伊藤さんを名誉毀損で訴えた。
この裁判の判決では、山口さんが伊藤さんに対して性行為などをしたことが認められ、山口さんの名誉毀損の訴えは退けられた。
このケースの場合、なぜ名誉毀損は認められなかったのか。尾崎弁護士に聞いた。
尾崎弁護士「この裁判では、(1)飲食店を出た時点で伊藤さんが深く酒に酔った状態であったことについて山口さんも認めていた、(2)伊藤さんは被害直後から友人などへ被害の詳細について一貫した供述をしていた、(3)2人を乗せたタクシーの運転手の証言があった、などの事情がありました。裁判所はこれらの要素によって伊藤さんの性被害の供述は十分に裏付けられていると判断し、伊藤さんの供述は信用できるとしたのです」
尾崎弁護士によると、名誉毀損の裁判においては、裏付けとなる証拠の有無が大きなポイントとなるようだ。一方で、裏付け証拠が弱いとして名誉毀損が認められた例もある。