【例文あり】正しいビジネス敬語とは? メールの言い回しや間違いやすい使い方を解説

敬語とは他人を敬う気持ちを表す言葉のことです。話し手や書き手が、相手や話題に上がっている人物に対して敬意を払うために使われます。ビジネス敬語や、メールでの敬語の使い方についてフリーアナウンサーの小川厚子が解説します。

正しいビジネス敬語とは? 間違いやすい使い方やメールの言い回し
正しいビジネス敬語とは? 間違いやすい使い方やメールの言い回し

敬語とは他人を敬う気持ちを表す言葉のことです。話し手や書き手が、相手や話題に上がっている人物に対して敬意を払うために使われます。ビジネスシーンにおいては、基本的に敬語で話すことが求められます。ビジネス敬語や、メールでの敬語の使い方についてフリーアナウンサーの小川厚子が解説します。

<目次>
敬語の種類:尊敬語・謙譲語・丁寧語
よく使う敬語一覧表
【例文】ビジネスシーンでよく使う敬語・言葉遣い8選
【例文】ビジネスメールでよく使う敬語・言い回し18選
間違いやすい敬語
ビジネス敬語の使い分けや誤用
ビジネス敬語を使うときの注意点
まとめ

敬語の種類:尊敬語・謙譲語・丁寧語

敬語には大きく分けて尊敬語と謙譲語、丁寧語の3つの種類があります。それぞれについて解説します。

・尊敬語

尊敬語とは、話している相手や、話題に上がっている人物の動作や状態、物事などを高めて言い表し、敬意を示すものです。尊敬語の動作、事物の主は相手になります。尊敬語には、元の言葉を尊敬語の言葉に言い換える「別語形式」と、元の言葉に尊敬語を付け加える「添加形式」の二種類があります。

「別語形式」とは、例えば「見る」を「ご覧になる」や「言う」を「おっしゃる」のように別の言葉に変えることです。「添加形式」とは、普段使う言葉に「お(ご)~になる」「~なさる」などを付け加えて尊敬語にすることです。


・謙譲語

謙譲語とは、自分や自分側の人物、事柄をへりくだって言い表すことで話し相手を高め、敬意を示すものです。謙譲語の動作、事物の主は自分です。謙譲語には、相手に対して自分を低めて表現する方法(謙譲語1)と相手に対して丁重に表現する方法(謙譲語2)の二種類があります。


・丁寧語

丁寧語とは、会話や文章を丁寧な印象にするのが丁寧語です。「です」「ます」という語尾がそれにあたります。印象はソフトになりますが、丁寧語自体に、尊敬語ほど相手に敬意を示すことはできません。できるだけ尊敬語を使うようにしましょう。

よく使う敬語一覧表

・する

尊敬語:なさる・される
謙譲語:いたす・させていただく
丁寧語:します 


・言う

尊敬語:おっしゃる・言われる 
謙譲語:申す・申し上げる
丁寧語:言います


・来る

尊敬語:いらっしゃる・おいでになる・お越しになる・来られる
謙譲語:うかがう・参る
丁寧語:来ます


・行く

尊敬語:いらっしゃる・おいでになる・行かれる
謙譲語:うかがう・参る
丁寧語:行きます


・知る

尊敬語:ご存じ
謙譲語:存じ上げる・存じる
丁寧語:知っています


・聞く

尊敬語:お聞きになる
謙譲語:拝聴する・うかがう
丁寧語:聞きます


・わかる

尊敬語:おわかりになる・ご理解いただく
謙譲語:かしこまる・承知する
丁寧語:わかりました


・読む

尊敬語:お読みになる
謙譲語:拝読する
丁寧語:読みます


・会う

尊敬語:お会いになる・会われる
謙譲語:お目にかかる
丁寧語:会います


・考える

尊敬語:お考えになる・ご高察なさる
謙譲語:存じる・拝察する・愚行する
丁寧語:考えます


・座る

尊敬語:おかけになる・お座りになる・座られる
謙譲語:お座りする・座らせていただく
丁寧語:座ります


・食べる

尊敬語:召し上がる
謙譲語:いただく・頂戴する
丁寧語:食べます


・思う

尊敬語:お思いになる・思われる
謙譲語:存じる
丁寧語:思います


・帰る

尊敬語:お帰りになる・帰られる
謙譲語:失礼する・おいとまする
丁寧語:帰ります

同じ意味を表す敬語でも敬意の違いがあります。

例えば「社長が来る」を尊敬語で表すと
(1)「社長がいらっしゃる」
(2)「社長がおいでになる」
(3)「社長が来られる」となります。

(1)はその言葉にしか使わない「別語形式」の尊敬語です。(2)は「お(ご)~になる」の「添加形式」の尊敬語です。(3)は「~れる、られる」の「添加形式の尊敬語です。

(1)(2)が敬意が高い表現になります。同じ敬語でも適切な言葉を選ぶことでより敬意を表すことができます。

【例文】ビジネスシーンでよく使う敬語・言葉遣い8選

・あいさつでよく使う敬語と言葉遣い

【例文】
「いつもお世話になっております。本日もよろしくお願いいたします。」

「お世話になっております」はすでに面識のある人に対して使うあいさつの言葉です。「お世話様です」は失礼な印象を与える場合があります。目上の方や取引先の方には使わないようにしましょう。

【例文】
「ご無沙汰しております。その節は大変お世話になりました。」

「ご無沙汰しております」は目上の人や取引先の方に久しぶりに連絡をとる際に用いる言葉です。


・来客のときによく使う敬語と言葉遣い

【例文】
「A社の○○様が、受付にお見えになりました。」

「お見えになりました」は会社にお客さまや得意先の方が来られた場合に使います。「お越しになられました」は二重敬語ですので使わないようにしましょう。

【例文】
「あいにく○○は本日休暇を取っております。」

「休暇をとっております」は来客があったときに、自分の会社の社員が休みをとっている場合に使います。「お休みをいただいております」は自分の会社の社員を持ち上げる表現になりますので使いません。

【例文】
「担当者が参りますので、こちらにお掛けになってお待ちください。」

「お掛けになってお待ちください」は来客時、いすに座って待っていただくときに使います。


・会議のときによく使う敬語と言葉遣い

【例文】
「お手元の資料をご覧ください。」

会議で手元に配った資料を見ていただくときに使います。尊敬語の「ご覧になる」と謙譲語の「拝見する」はよく使う言葉ですのでしっかりと覚えておきましょう。

【例文】
「いただいた資料を拝見いたしました/拝見しました。」

自分が見たことを伝える謙譲語です。「拝見させていただきました」は二重敬語ですので使わないようにしましょう。

【例文】
「ご不明な点はございませんでしょうか。」「ご質問はございませんでしょうか。」

「お分かりいただけましたでしょうか」は上から目線に聞こえてしまう場合がありますので控えた方が良いでしょう。

【例文】ビジネスメールでよく使う敬語・言い回し18選

・初めてメールを送る場合

【例文】
「突然のご連絡失礼いたします。○○株式会社の△△と申します。」
「初めてご連絡させていただきます。○○株式会社の△△と申します。」
「突然のメールでのご連絡失礼いたします。」

面識のない相手からの突然のメールであることを詫びる表現を入れると丁寧で印象がよくなります。メールの件名と本文には、自社の企業名と自分の名前を記載しましょう。日々、多くのメールが届く中で分かりやすい件名にすることで、相手がメールを開く可能性も高くなります。


・2回目以降のメールを送る場合

【例文】
「いつもお世話になっております。」
「今後ともよろしくお願いいたします。」
「今後ともよろしくお願い申し上げます。」
「引き続きよろしくお願いいたします。」
「お忙しいところ恐縮ですが、○日までにご連絡をいただけますと幸いです。」

本文の最後に必ず結びの言葉を入れるのがマナーです。相手から、返信を必ずもらいたい場合には、一言付け加えておくといいでしょう。そのときに期日を追記しておくことで、スムーズに仕事が進みます。


・教えてもらいたい場合

【例文】
「○○について教えていただけませんでしょうか。」
「○○についてご教示願います。」
「○○についてご指導いただけないでしょうか。」

やり方や手段などを相手に教えてもらうようにお願いするときに使います。相手にお願いする場合は丁寧にお願いしましょう。「教えて」を「ご指導」と言い換えることで相手へ敬意が強まります。「ご教示」は「教え示す」という意味でビジネスシーンでよく使われる言葉です。

・お願いしたい場合
【例文】
「大変お忙しいとは存じますが、○○の件、よろしくお願い申し上げます。」
「大変恐縮ですが、○○していただければ幸いです。」
「大変お手数をおかけしますが、○○していただければと存じます。」

お願いしたい場合は、こちらの要望を伝えつつ相手の状況にも配慮する必要があります。また、お願いする理由と内容を明確にする必要があります。相手を気遣う誠実な姿勢を伝えましょう。

・結びのあいさつ
【例文】
「今後とも、よろしくお願い申し上げます。」
「今後とも、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。」
「引き続きよろしくお願い申し上げます。」
「ご多忙のことと存じますが、○日までに返信をお願いいたします。」

ビジネスメールでは、相手に合わせて結びのあいさつを使い分けましょう。

間違いやすい敬語

・どちらさまでしょうか

相手が名前を名乗らなかった場合に、つい口から出てしまう言葉かもしれませんが、正しい敬語ではなく相手の方に失礼に当たります。

この場合「お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか」「おそれいりますが、お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか」のように伺いましょう。「おそれいりますが」「失礼ですが」というクッション言葉を使うとさらに丁寧です。


・了解しました

「了解」という言葉は目上の人が目下の人に使う言葉です。「了解しました」「了解いたしました」は丁寧な言葉にみえますが、目上の人や、取引先の方には使わないようにしましょう。同僚や後輩、部下には使用しても問題はありません。この場合は「かしこまりました」「承知しました」を使うといいでしょう。


関連記事:「了解しました」は上司に使えない? 正しい敬語や「承知しました」との違い

・なるほどですね

「なるほど」に「です」を付けて丁寧に表したものと考えられますが、「なるほど」という言葉は感嘆詞や副詞の働きがあり「なるほど」に「です」が付くことはありません。

敬語としては使えず、目上のかたには失礼な言葉遣いです。「なるほどですね」のかわりに「さようでございますね」「おっしゃる通りですね」と相づちをうつといいでしょう。

関連記事:「なるほど」は上司に失礼? 正しい敬語とビジネスで使える言い換え表現

・○○円からお預かりします
会計時にお客さまからお金を受け取り「1000円からお預かりします」という言葉を聞くことがありますが、これは間違いです。「から」の意味は「ある場所から別の場所へむかう」「何時から何時まで行う」のように、場所や時間の始まりを表す言葉です。お金の受け渡しには使いません。

この場合「1000円お預かりします」と言いましょう。場合によってはバイト敬語としてマニュアル化していることもあるようです。

・○○様でございますか
「ございますか」は丁寧な言葉なので間違えやすいのですが、「ございます」は「ある」の丁寧語なので人に対して使うのは不適切です。この場合は「いる」の尊敬語「いらっしゃる」を使います。「○○様でいらっしゃいますか」とたずねましょう。

・○○になります
「○○になります」という言葉は、あるものが、別のものに変化するときや、結果を表すときに使う言葉です。「1000円になります」や「お手洗いはあちらになります」のような使い方は間違いです。「○○になります」は「~です」の丁寧語ではありません。

この場合「1000円です」「お手洗いはあちらです」のように使いましょう。

ビジネス敬語の使い分けや誤用

・「ご苦労様」と「お疲れ様」の使い分け

どちらも相手をねぎらう言葉ですが「ご苦労様」は目上の人が目下の人に労をねぎらって使う言葉です。上司や先輩に対しては「ご苦労様」は使わないようにしましょう。「お疲れ様です」は目下の人から目上の人に使えるあいさつで、相手の立場にかかわらず使えるあいさつですので覚えておきましょう。


・「とんでもございません」はNG?

謙遜の意味で一般的によく使われていて、以前は間違った言葉とされていましたが2007年の文化庁の敬語指針において、「とんでもございません」をつかうことは問題ないとされました。ただし文法上は誤用です。

本来は「とんでもない」が一つの単語であり、「とんでも」と「ない」に分けることはできません。「とんでもないことです」「とんでもないことでございます」が正しい日本語です。覚えておくといいでしょう。


関連記事:「とんでもございません」は間違った敬語?

・クッション言葉を活用しよう

相手に都合を伺ったり、依頼をしたり、面倒をかけた場合などにクッション言葉を添えることで言葉が柔らかくなり、相手を敬う気持ちが伝わりコミュニケーションがスムーズになります。

「もしよろしければ」「お差し支えなければ」「お手数をおかけしますが」「大変恐縮ですが」など、その場面に応じた使い方ができるようにしておきましょう。

ビジネス敬語を使うときの注意点

・二重敬語に気を付ける
二重敬語とは一つの言葉に同じ種類の敬語を二重に使うことです。例えば「部長がおっしゃられていました」のように、「おっしゃる」と「~られる」を使うような表現です。相手を敬うあまり二重敬語にならないように注意しましょう。

・尊敬語と謙譲語の使い方を間違えない
尊敬語と謙譲語を使うときに、主語が誰なのかを考えます。主語が相手の場合、使うのは尊敬語です。主語が自分の場合は、謙譲語を使います。使い方を間違えないように注意しましょう。

・外部の人と話す際に「身内に敬語」を使うのはNG
場所によって敬意の方向が変わります。社内の人と社内で話すときには上司や先輩など自分より立場の上の人に敬意を表します。

しかし、社外で取引先やお客さまと会話をしている場合は、自分の上司や先輩ではなく社外の人に敬意を表します。くれぐれも身内に敬語を使わないように注意しましょう。家族の場合も同じく、自分の身内に敬語を使わないようにしましょう。

・「ら抜き言葉」に気を付ける
「見られる」「食べられる」「来られる」というような言葉を「見れる」「食べれる」「来れる」のように「ら」を抜いて使うことを「ら抜き言葉」と言います。日常的に使われていますが、文化庁は『改まった場での「ら抜き言葉」の使用は認知しかねるとすべき』と使用を認めていません。

・口癖に注意する
「だって」「でも」「どうせ」など、人を不愉快にする口癖には注意しましょう。言い訳や相手を否定するニュアンスを含んでいます。言いそうになったら、「なるほど」「確かに」「そうですね」など相手を肯定する言葉を使うようにしてみましょう。

まとめ

敬語を使うとき、まずは相手が自分にとってどのような立場の人であるかを把握することが大切です。誰に敬意を払えばよいかを考えて、状況をしっかり整理しましょう。くれぐれも社外で身内に敬語を使わないよう注意してください。

謙譲語を尊敬語と勘違いして目上の人の動作に謙譲語を使ってしまわないように尊敬語と謙譲語の分類はしっかり頭に入れておきましょう。普段から言葉遣いに気を付けてスムーズに口からでるようにしておくといいでしょう。敬語が使えると互いに気持ちよくコミュニケーションがとれて人間関係も良くなります。

■執筆者プロフィール

担当ライター
小川厚子(おがわあつこ)
元NHK岡山放送局キャスター/NHK情報番組メインキャスター/NHKニュースセブンリポーター/NHKラジオ第一ニュース/NHKラジオ第一あさいちばんリポーター。退局後は、POLA・阪急不動産インフォマーシャル・グリコラジオCM・ナレーション、テレビドラマアナウンサー役などフリーアナウンサーとして活動中。こどもアナウンス発声協会講師/印象力アップアドバイザー/神戸市立中学校放送部部活動指導員/企業研修等、話し方講師として活動中。
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