3:『ヴィレッジ』(2023年)
ゴミの最終処分場がある村で希望のない毎日を送っていた青年の姿を追うヒューマンサスペンスです。村長の息子からいびられ続け、わずかな給料も母親の借金の返済に消えていく希望のない日々が、東京で暮らしていた幼なじみが帰ってきたことをきっかけに変わり出すものの、その後はさらに絶望的な事件が起こります。極端ではあるものの、どこかに確かに存在する残酷な「世界の縮図」を描いたような映画といえるでしょう。
憔悴している中でも複雑な感情を見せ続ける横浜流星に圧倒されますし、最悪な育ち方をしたジャイアンのような一ノ瀬ワタルも忘れられません。なお、藤井道人監督は「望まない状況にいる、生きづらさを抱えた人たち」を主人公とした作品を多く手がけており、同年2023年公開の韓国映画のリメイク作『最後まで行く』では、その作家性が「かわいそうだけど笑ってしまう」いい意味で意地の悪いコメディへも昇華されていました。
4:『我は神なり』(2017年)
こちらは韓国製のアニメ映画。ダム建設のために水没することが決まった田舎の街で、粗暴な男がカリスマ牧師と対立するのですが……この主人公が何しろ最低最悪。進学のために貯めた娘のお金を奪うことは序の口で、全てが極端に暴力的かつ自分勝手。さらに事態は悲劇的な方向へと突っ走り、全編にわたっていい気分になれる場面がありません。
ヨン・サンホ監督は、日本で同年2017年に公開された『新感染 ファイナル・エクスプレス』がゾンビ映画の新たな傑作として話題を集めており、こちらはエンタメ性に満ち満ちた内容ながら、やはり狭い場所での同調圧力や人間の浅ましさを描いており、やはり一貫した作家性を感じられました。その『新感染』の前日譚となるアニメ映画『ソウル・ステーション パンデミック』も、とある衝撃的な展開も含め、やはりいい意味でイヤな気分になれるゾンビ映画となっていました。
5:『ビジランテ』(2017年)
タイトルの意味は「自警団」。三兄弟を取り巻く状況が悲劇へとなだれ込んでいくサスペンスドラマです。ヤクザ商売をしている連中、権力を盾にする政治家、夜に騒いで迷惑をかける人物など、田舎のイヤな面をたっぷりと描いているからこそ、ゆがんでいながらも確かな互いへの兄弟愛がある、比較的善良な面もある主人公たちの幸福を願いたくなるもなる内容になっていました。
入江悠監督は『SR サイタマノラッパー』シリーズを筆頭に、やはり田舎で鬱屈(うっくつ)したまま過ごしている人々の姿をよく描く、まさに「この田舎がイヤだ」映画を得意とする作家の1人。それが最もダークかつストレートに現れたのが、この『ビジランテ』でしょう。R15+指定されるだけの暴力シーンはかなり容赦がないので、覚悟して見ることをおすすめします。