歩き方も違う、舞台と映像の演技は別物
福澤克雄監督作品といえば、ミュージカルや歌舞伎と、舞台俳優を多く起用する傾向があり、『VIVANT』でも橋本さんと吉原光夫さん(ピヨ役)という、2人のジャン・バルジャン(『レ・ミゼラブル』)役者が登場。その狙いは、ご自身も意識されていたようです。
「僕にとって舞台と映像は別物で、例えば首を動かすこと一つとっても、舞台では15センチくらいのところを、映像だと数センチ、時には数ミリ単位で動かすよう求められます。『レッドクロス』(2015年)で初めて福澤さんとご一緒した時も、僕が本番で(感情が乗って)大きなストロークで歩いたら、“映像と舞台は違うんですよ。それではカメラの位置を決めた意味がなくなります”と教えていただきました。そのあんばいは今でも課題ですが、僕というフィルターを通して表現することには変わりないので、感情、そして言葉を的確に伝えることはいつも心がけています。
でもそこをクリアすれば、僕らが舞台で慣れている(大きな)表現は、福澤さんの作風に合っているように感じます。表情にしても、デフォルメすることで芝居にダイナミズムが生まれるような気がするんですよね。
現場ではみんな(福澤さんを)ジャイさんと呼んでいるのですが、ジャイさんは僕らに思い切り芝居をやらせてくれます。“熱く熱く!”“もっとテンポ上げて!”と求めて下さって、やればやるほどニコニコして下さるんですよ。やりすぎて止められることも時にはありますが(笑)、半端ないテンポ感の芝居が生まれていると思います。
ジャイさんはラグビー経験がおありで大柄なこともあって、初対面の時にはビビりましたが(笑)、撮影が進む中で、“この役者はこうなんだな”と見抜いて信頼して下さる方だと分かりました。以来『下町ロケット』『ブラックペアン』、本作とご一緒しています。音楽の使い方もすてきだし、後継者も育てていらっしゃって素晴らしい監督だと思います」
『VIVANT』の出番が終わった後は、一視聴者としてストーリーを楽しんでいたのだそう。
「周りから“この後どうなる?”と散々聞かれましたが、台本をいただいていなかったので答えようがなくて(笑)。“原部長、(描かれてないところで)何かしでかしてるんじゃ?”という考察もいただきました。僕自身、原はいったいどうなったんだろうと気になっていまして、もし映画版や続編が作られるのなら、もう一度絡んでいきたいという願望はあります。とりあえず、モンゴル……いや、バルカに行ってみたいですね。撮影は相当きつかったみたいですが(笑)」
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