『VIVANT』のあのシーンは、実は笑いをこらえながら撮影
2023年最大の話題作といえる『VIVANT』。物語の発端となった誤送金事件の“黒幕”候補の1人で、丸菱商事の“経理の原部長”を演じたのが、舞台出身のベテラン俳優、橋本さとしさんです。
黒縁眼鏡をかけ、堺雅人さん演じる主人公・乃木に並々ならぬ“圧”をかけていた橋本さん。劇団☆新感線に在籍していた頃からのエネルギッシュな持ち味に加え、近年は人生の悲哀がにじむ“渋い”演技でも観る者を魅了し、ドラマに舞台にと引っ張りだこです。そんな彼に“まさかこんな展開になるとは思いもしなかった”という『VIVANT』の思い出や、来年春に出演する話題作『カム フロム アウェイ』について、たっぷり語っていただきました。
「僕ら、先の台本は渡されていなかったので、いったいこの話、どうなるのかなと思いながら撮影していました。誤送金の話から始まっていたので、(『半沢直樹』のような)会社内での(パワーゲームの)話なのかなと思って、“こういう上司いるよね”みたいなさじ加減でパワハラ系の部長的キャラクターとして演じたんです。まさかあそこまで話が広がっていくとは、想像もしていませんでしたね。僕に関しては、ふたを開けてみたら、若い女性社員に振り回される部長でした(笑)」
と、楽しそうに『VIVANT』を振り返る橋本さん。放映が始まると、周囲からの反響がすさまじく、質問攻めにも遭ったそうです。
「黒幕候補に入っていたので、周りから“どうなの?”と。“絶対違うよね”という人と“違う……と見せかけて実は、なんでしょ?”という人、2タイプに分かれました(笑)」
乃木に対してびっくりするほど顔を寄せながら“太田さんに近づくな!”と威嚇するシーンでも、強い印象を残しました。
「あの辺りは僕がリハーサルで自由にやって、それに対してカメラの位置を決めて下さいました。堺雅人君とは昔からの知り合いで、今回、久々の共演だったのがうれしくて。現場はすごく緊張感があったけれど、堺君のおかげでリラックスすることができたので、思いっきりやってみようと思ったんです。近づきすぎて、実は二人で笑いをこらえながらやっていました(笑)」
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