恵比寿始発「鉄道雑学ニュース」 第88回

大井川鐵道が昭和レトロな「普通客車列車」を運行、令和の今体験できる“奇跡”の旅

大井川鐵道では、人気企画「普通客車列車」の運転を2023年秋冬も行う。実際に体験した様子を写真とともにリポートしよう。

客車列車の魅力 

ななつ星
現役の客車列車といえば豪華寝台列車「ななつ星in九州」がある
客車は、電車やディーゼルカーのように車両自体に動力装置がないので、自力走行はできず、機関車がけん引する。発車すると、がちゃんがちゃんと音をたてて騒々しい。運転の仕方によっては前後の振動が激しいが、それが客車列車の魅力である。乗っていると、ぐいぐい引っ張られているような感じが伝わってくる。これは電車では体感できない。

スピードが出てくると、カタンカタンという走行音だけが響く。電車やディーゼルカーのようなモーター音やエンジン音が床下から伝わってこないので、機関車から遠い客車は静かだ。客車列車が衰退しても、客車による夜行寝台特急ブルートレインが生き残ったのは、寝台車には静かで穏やかな点が必要だったからである。
 

普通客車列車の旅、2023年秋冬

笹間渡駅で停車中
川根温泉笹間渡駅で停車中の普通客車列車
今回の普通客車列車は、1日3往復。最初の列車は、新金谷駅を13時46分に発車して家山駅に向かう。元西武鉄道のE31形が旧型客車を2~3両けん引する。

家山駅に到着すると機関車が切り離され、別の線路を通って列車の最後尾に連結(「機回し作業」という)、進行方向を変えて新金谷に戻る。新金谷では、最後尾に別の電気機関車を連結。2台の電気機関車が客車を挟むようにして発車する。

東海道本線との乗換駅である金谷駅に到着すると、機関車を付け替えることはなく、そのままの形で進行方向を逆にして発車(16時00分)。今度は、家山駅を通り過ぎて、川根温泉笹間渡駅に向かう。

家山駅と川根温泉笹間渡駅の間は、2022年9月の台風による被害で不通になっていたが、2023年10月1日に復旧したばかりの区間である。
大井川を渡る客車列車
大井川を渡る普通客車列車
抜里付近では茶畑の中を走り、大井川第一橋梁(きょうりょう)を渡ると当面の終点・川根温泉笹間渡駅のホームに滑り込んでいく。到着間際では、往年のブルートレインではおなじみだった『ハイケンスのセレナーデ』のメロディーが流れ、客車列車に揺られていることを実感した。

なお、大井川鐵道の旧型客車では『ハイケンスのセレナーデ』のほか、『ブラームスの子守歌』のメロディーも使っている。どちらのメロディーが流れるかは乗車当日の車掌の裁量なので、お気に入りのメロディーとは異なることもある。

2023年秋冬の「普通客車列車」企画の詳細(運転日・列車ダイヤなど)は、こちら
抜里駅
運転再開の喜びにあふれる抜里駅の休憩所

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