国内で10代から圧倒的な支持を得ているスマートフォンといえば、iPhoneだ。MMD研究所が2022年4月、スマートフォンを所有する18~69歳の男女1万人を対象に行った調査によると、10代女性の84.1%、10代男性の70.1%がiPhoneをメインで利用している。
10代は「みんなが持っている」「AirDropが便利」「Appleのブランドイメージがかっこいい」などの理由でiPhoneを持ちたがる。iPhoneで“スマホデビュー”した子どもも多いだろう。
iPhoneのアプリは「App Store経由だから安全」だと思われていたが……
親としては、iPhoneの安全性を信頼して我が子に持たせている人も多そうだ。特にアプリについては、Appleに承認されたアプリが提供される「App Store」経由でしかアプリをインストールできないため、ITの知識がない人でも安心して活用できる。
しかし、この安全性を脅かす動きが政府により進められている。
日本政府のデジタル市場競争本部は、Appleに対してApp Store以外の他社によるアプリストアも利用できるように義務付ける法案を、早ければ2024年の通常国会に提出する方向で調整をしている。
なぜ政府が他社のアプリストアを認めさせようとしているのか、それはアメリカや欧州などで巻き起こっている「モバイル・エコシステム」への議論が元となっている。
政府が進める「モバイル・エコシステム」とは
スマホやタブレットといったモバイル端末は、「モバイルOS」「ブラウザ・アプリストア」「Webサービス・アプリ」という3つのレイヤーによるエコシステムが存在する。その基盤となるモバイルOSは、iOS(Apple)とAndroid(Google)の寡占状態となっており、他のプラットフォームの参入が難しいとされている。
この寡占状態を打破することで、各方面から競争圧力が働き、多様な主体によるイノベーションが起きる。また、消費者にとっては選択の機会が確保されるという考えが政府の主張だ。
デジタル市場競争本部は2019年9月の発足以来、何度も議論を重ねてきた。そして、2023年6月16日に「モバイル・エコシステムに関する競争評価 最終報告(案)」が提示された。
最終報告(案)では、アプリストア関係の課題として、iPhoneに「サイドローディング」(App Store以外のアプリストアからダウンロードさせる)を認めるように求めている。Apple以外の事業者がiOSに関するアプリストア事業に参入する機会を失っていることなどを理由に挙げている。セキュリティとプライバシーが確保できている「アプリ代替流通経路」を実効的に利用できるよう義務付ける方針だ。
さらに、アプリストアの手数料についても言及されている。現在、アプリ事業者がApp Storeで有料コンテンツを販売する場合、Appleの決済・課金システムを利用するため、ユーザーが購入した際には30%、もしくは15%(条件あり)の手数料をAppleに支払う必要がある。この点に関しても、アプリ事業者から「高い」という声が挙がっているとし、自社の決済・課金システムの利用を義務付けることを禁止することを提言している。
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