秘境の温泉旅館でしっぽりジビエ料理のフルコース
早川町からさらに南、静岡県との県境に位置する南部町にひっそりと静かにただずむ温泉旅館〈船山温泉〉。周りは川と森に囲まれ、深い山奥にポツンと一軒。わずか10室のみの小さな旅館です。静かな湯宿をコンセプトに、7人以上のグループや小学生以下の子どもは受け付けていないため、カップルや気のおけない友人同士、または誰にも邪魔されたくないひとり旅で、のんびりゆっくり自分の時間を過ごすのにぴったりの隠れ宿です。
明治25年の創業、元々は湯治場だったという古い歴史があり、現在は5代目の武井稔さんが館主として、宿を盛り立てています。宿のクオリティを上げるために、日本各地のさまざまな旅館を500泊以上巡って研究し、無駄な部分は切り捨て、いいなと思うところはできるだけ取り入れるよう改善したそう。そのせいかメリハリの効いたサービスで、長い時間を気兼ねなく心地よく過ごすための細やかな配慮が行きわたっています。日頃忙しく過ごしている人やお疲れ気味の人には、のびのびと体を伸ばし、頭を空っぽにして、心身共にリフレッシュできそうです。
船山温泉のこだわりの1つは料理です。山と川の幸を生かし、この地域と深い関わりのある食材を中心にしたオリジナル料理。食材や料理の一つ一つにストーリーがあり、この土地らしさを感じさせます。料理は季節によって変わり、いくつかのプランが選べますが、今回は「やまなしジビエ」がテーマなので、「熊肉とジビエのシャルキュトリーを愉しむプラン」をチョイス。ジビエは前述の〈早川ジビエYAMATO〉または、丹波山村にある〈タバジビエ〉から仕入れているそうです。
「この地域は昔からイノシシ鍋など野生の獣を食べる文化がありました。うちの先代も先々代も猟師をやっていましたし、自分もよく山に一緒について行っていました。野生の獣が身近にあった文化的背景から、ジビエ料理を提供するのは自然な流れです」と武井さん。
どのジビエ料理もうま味が豊かで、香りよく、素材の風味を生かした自然な味わいです。ジビエ好きにはたまらないおいしさですが、ジビエ初心者にもジビエとはあまり意識せず、とにかくとびきりおいしい肉として食べ進めることができます。ヘルシーな赤身肉なので、胃に重くなく、さっぱりと食べられる印象でした。
おいしいもの好きの武井さんはワインにも造詣が深く、山梨県産のワインはもちろん、上質なラインナップを多く取りそろえており、ワインセラーをのぞくとその豊富なセレクトに驚きます。ジビエに合うワインもおすすめを選んでくれるので、ワイン好きはぜひ相談してみて下さい。
〈船山温泉〉は名前の通り、温泉も大きな目玉です。男女入れ替え制の大浴場と露天風呂が計4つ、さらに空いていれば誰でも使える貸切風呂が2つあります。泉質は単純硫黄冷鉱泉(低張性弱アルカリ性冷鉱泉)。元湯治場だったこともあり、さまざまな効能があります(詳細は船山温泉の公式Webサイト参照)。夜はほのかにライトアップした神秘的な森の様子や星空を、朝は爽やかな自然の風景を眺めながら、湯船の中でゆったりくつろいで過ごせます。
■船山温泉
http://www.funayama-onsen.com/
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