どうする学校?どうなの保護者? 第8回

保護者を震えあがらせた虐待禁止条例。反対の署名活動をした「さいたま市PTA協議会」へのモヤモヤ

全国の保護者をびびらせた末、無事撤回された虐待禁止条例改正案。反対意見を表明して注目を集めたのが、さいたま市PTA協議会でした。どんな経緯で意見表明したのか? もっと筆数を集めた署名があるのに、なぜ市P協ばかり報じられたのか? 考えてみました。

3倍強の10万筆集めた署名活動もあった

今回の条例改正案への反対の動きでは、ほかにも気になったことがありました。
 
実は署名はもう1つ行われていて、集まった筆数はそちらの方がはるかに多かったのです。呼びかけ人は、埼玉県内で2人の子を育てる母親、野沢ココさん。さいたま市P協が集めた署名数は約3万筆、野沢さんのそれは約10万筆でしたから、3倍強も開きがありました。
 
ところがマスコミは、筆数が少なかったさいたま市P協の署名活動ばかり、よく取り上げていました。なぜそうなったのか? 「P連がこういう活動をするのは珍しかったからでは」と、今川さん。それもあるかもしれませんが、おそらく世間やマスコミの側にも、PTAやP連に対し、今回のようなアクションを期待する向きがあったのでしょう。
 
逆に、野沢さんの署名の方が、これほど多くの筆数を集めた理由も考えさせられます。署名を始めたのが、さいたま市P協より半日ほど早かったせいもあるにせよ、それにしても3万と10万というのは随分大きな差です。
 
今川さんいわく「PTAって、なかなかいい印象がないからでは(苦笑)」。うーん、それは確かに、ありそうです。
 
特にさいたま市P協は、2023年はじめ、過去4年間に「1000万円もの使途不明金」があったことが判明しています。春には第三者委員会で調査が始まりましたが、当初予定されていた調査期間は延長となり、まだ原因は究明されていません。「市P協のメンバーが1番気をもんでいる」そうですが、早く真相を明らかにしてほしいものです。
 
筆者はちなみに、野沢さんのサイトと、さいたま市P協のサイトの両方で署名しました。埼玉県民ではありませんが、とにかくこんな条例ができてはいけないと思ったからです。 

改めて考える、P連の存在意義とは

今回の件を振り返って、いくつか思うことがあります。
 
1つは、全国のP連に対して。昨今P連は存在意義が見直されており、P連を離れるPTAも増えつつあります。もし今後も存続を望むのであれば、今回のさいたま市P協のような、保護者を守る方向のアクションをもっと考えた方がいいのでは、ということ。
 
ただし、意見表明を行う際はくれぐれも会員の声を広く聞いて、執行部など一部の人だけの意見を「みんなの声」にしない、ということは言うまでもありません。
 
さらに大前提として、PTAが会員の意思を尊重することも必須でしょう。会員に加入意思の確認すらしていない団体が、こんなときだけ「これがみんなの意見です」などと言っても説得力がありません。普段から民主的な団体であることを、何より願います。
 
マスコミも、PTAと名前がつく「だけ」でやたらとありがたがるのは、やめてもらえたら。今回なぜ、個人による署名活動が3倍もの筆数を集めたのかという点も、よく考えてほしいところです。


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この記事の執筆者:大塚 玲子 プロフィール
ノンフィクションライター。主なテーマは「PTAなど保護者と学校の関係」と「いろんな形の家族」。著書は『さよなら、理不尽PTA!』『ルポ 定形外家族』『PTAをけっこうラクにたのしくする本』『オトナ婚です、わたしたち』ほか。ひとり親。定形外かぞく(家族のダイバーシティ)代表。
 
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