【連載:アスリートの育て方 ーVol.6ー】
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明治大学の3年時に得点ランキング2位の14ゴールをマークし、チームの関東大学サッカーリーグ1部優勝に大きく貢献した林陵平は、2008年7月にアカデミー時代を過ごした古巣の東京ヴェルディに入団する。
現在の妻と出会ったのは、2010年から在籍した柏レイソル時代。「照れくさいので書かないでください」と言って林は笑うが、まさに運命的な出会いを経て、交際からおよそ1年後、モンテディオ山形でプレーしていた26歳の時に籍を入れた。
結婚から10年。現在2人の間には小学3年生と4歳の娘がいる。その教育方針を聞けば、自身が育った家庭環境と、面白いほど重なる部分が少なくなかった。
年間で実に500~600試合をチェックし、週に3~5試合の解説を担当。さらに今季までの約3年間は東京大学ア式蹴球部の監督も務め(2023年10月9日に退任)、「週末は睡眠時間が2~3時間」という多忙な毎日の中で、どのように子どもたちと接しているのか。
東大の学生たちを指導して日々感じたことと併せて、ここからは「子育て論」について語ってもらう。「自分の子どもが将来なれるとしたら、トップアスリートか東大生か」──。究極の質問の答えは?
教育方針は「子どもがやりたいことをやらせる」
小学3年生と4歳のかわいい盛りの娘が2人。林に限らず、世の男親なら誰しもが、目の中に入れても痛くないと思うのは当然だろう。「めっちゃかわいいですよ。だからあんまり叱れない(笑)。あいさつとか約束を守るとか、基本的なところを妻がきちんとしつけてくれる分、僕がフォローに回る感じですかね。そのあたりのバランスはうまく取れていると思います」
教育方針は、自分が両親にそうして育てられてきたように、「子どもがやりたいことをやらせる」だ。
「自分が育ってきた環境が、今の子育てに影響している部分は大きいですね。不自由なく、本人がやりたいことは全部やらせてあげたいし、進みたい道に進めるようサポートしてあげたい。あれはダメだよ、これは無理だよって言わなくていいように、だから僕がしっかり稼がないと(笑)」
実際に娘たちには、ピアノ、新体操、そろばん、プールと、さまざまな習い事をさせている。そのうえで、「自分に合わないと思ったら辞めてもいいけれど、やるからにはちゃんとやり続けよう」という決まりごとも設けている。
それは、林が自分自身に課すルールでもある。多忙な毎日だが、スケジュールを上手にやりくりし、子どもたちと触れ合う時間もきちんと作る。
「選手時代は午前中の練習が終われば、たっぷりと時間がありましたが、今はもう次から次に解説の仕事がありますし、解説の前には準備として試合の映像もチェックしなきゃならない。それでも、好きなサッカーを観てお金をいただけるなんて、これ以上の幸せはありません。だから自分の中では、仕事をしているっていう感覚があんまりないんですよ」
自分のやるべきことを決めたら、やり続けられる子に
「試合の映像は電車での移動中に観るとか、隙間時間を有効活用しています。昔からテスト勉強でもサッカーの練習でも、スケジュール管理がすごく得意なんです。何曜日の何時から何時までは何をするとか、細かく予定を立ててタスクを振り分ける。そして、それを遂行する能力も高いと思っています。面倒くさいからと途中で投げ出したりしない、絶対にやり切るというのは、学生時代から変わらない信念。子どもたちにも自分のやるべきことを決めたら、それはやり続けようと言っています」どんなに前日の仕事が遅くても子どもたちと朝食のテーブルをかこみ、家にいる時はお風呂に入れ、寝かしつけ、時には3人で映画にも出かける。
「思春期になったら、娘はたいてい父親から離れていくよって、周りからはよく言われますが、絶対にそうならないって思えるくらい、今は一緒にいますし、すごく仲良くしています。『パパ、嫌だ』なんて言われたら、泣いてしまうかもしれません(笑)」
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