なぜ「自白強要型記者」を「NG」扱いにしてしまうのか
ジャーナリストというのは不正を追及することが仕事だ。ほとんどのジャーナリストはそれを取材で得た証拠や証言に基づいてやっている。が、中には、「思い込み」「記者のカン」だけで、「ちゃんと説明せよ」「そんな話は納得できない」と会見の場で詰め寄って、登壇者に不正を告白させようとするジャーナリストもいるのだ。
例えるのなら、警察が明確な証拠のないまま逮捕した容疑者に取調室で「お前がやったんだろ」と罪の「自白」を迫るような感じなのだ。
このような「自白強要型記者」から執拗に詰問された登壇者は、ほぼ間違いなくメンタルが破壊される。
当たり前だ。「他人から怒られる」という経験がほとんどない企業経営者などが、記者会見という大衆の面前でそれをやられる。しかも、いくら釈明をしても「納得がいかない」「説明が足りない」とダメ出しをされて、挙げ句の果てには怒声を浴びせられる。
気の弱い人ならば、トラウマになってしまうだろう。筆者が昔、謝罪会見を手伝ったある企業社長も、記者から「そんな説明で納得できるかよ!」と怒鳴られたのがショックで、それ以降、悪夢にうなされて汗びっしょりで夜中に目が覚めると嘆いていた。
これが、広報担当者が「自白強要型記者」を「NG」扱いにしてしまう理由だ。会見などで手を挙げた記者は指名したい。しかし、「自白強要型記者」に発言の機会を与えると、登壇した社長は全国民の前で「公開取り調べ」という屈辱的な仕打ちにあう。会見後に広報担当者は、経営陣から呼び出されて、こんな叱責を受けるだろう。
「広報のくせに、あんなヤカラのような記者だったということを知らなかったのか? あんなのは質問じゃなくて公開リンチだぞ!」
当然、キャリアに傷がつく。この会社で生きていく限り「社長に会見で恥をかかせた」という黒歴史が付いて回る。だから、「あとで問題になる」と分かっていても、このような危険のある記者をピックアップして「NGリスト」をつくってしまうのだ。
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