ここがヘンだよ、ニッポン企業 第19回

なぜジャニーズのコンサル会社は「NGリスト」をつくったのか、問題の背景に「自白強要型記者」

報道対策アドバイザーとして多くの会見運営に関わってきた立場からすると、ジャニーズ事務所の「NGリスト」は「あってもおかしくはない話」だ。その理由や背景にあるのは……。

なぜ「自白強要型記者」を「NG」扱いにしてしまうのか

ジャーナリストというのは不正を追及することが仕事だ。ほとんどのジャーナリストはそれを取材で得た証拠や証言に基づいてやっている。が、中には、「思い込み」「記者のカン」だけで、「ちゃんと説明せよ」「そんな話は納得できない」と会見の場で詰め寄って、登壇者に不正を告白させようとするジャーナリストもいるのだ。

例えるのなら、警察が明確な証拠のないまま逮捕した容疑者に取調室で「お前がやったんだろ」と罪の「自白」を迫るような感じなのだ。

このような「自白強要型記者」から執拗に詰問された登壇者は、ほぼ間違いなくメンタルが破壊される。

当たり前だ。「他人から怒られる」という経験がほとんどない企業経営者などが、記者会見という大衆の面前でそれをやられる。しかも、いくら釈明をしても「納得がいかない」「説明が足りない」とダメ出しをされて、挙げ句の果てには怒声を浴びせられる。

気の弱い人ならば、トラウマになってしまうだろう。筆者が昔、謝罪会見を手伝ったある企業社長も、記者から「そんな説明で納得できるかよ!」と怒鳴られたのがショックで、それ以降、悪夢にうなされて汗びっしょりで夜中に目が覚めると嘆いていた。

これが、広報担当者が「自白強要型記者」を「NG」扱いにしてしまう理由だ。会見などで手を挙げた記者は指名したい。しかし、「自白強要型記者」に発言の機会を与えると、登壇した社長は全国民の前で「公開取り調べ」という屈辱的な仕打ちにあう。会見後に広報担当者は、経営陣から呼び出されて、こんな叱責を受けるだろう。

「広報のくせに、あんなヤカラのような記者だったということを知らなかったのか? あんなのは質問じゃなくて公開リンチだぞ!」

当然、キャリアに傷がつく。この会社で生きていく限り「社長に会見で恥をかかせた」という黒歴史が付いて回る。だから、「あとで問題になる」と分かっていても、このような危険のある記者をピックアップして「NGリスト」をつくってしまうのだ。

>次ページ:東山さん、井ノ原さんの場合
 

Lineで送る Facebookでシェア
はてなブックマークに追加

連載バックナンバー

Pick up

注目の連載

  • ここがヘンだよ、ニッポン企業

    のび太のように「運動神経のない子」を徹底的に見えない化! 運動会の「教育的配慮」はアリかナシか?

  • ヒナタカの雑食系映画論

    2024年「秋のアニメ映画ランキング」を作ってみた。TOP3それぞれの「言葉に頼らない」表現の素晴らしさ

  • アラサーが考える恋愛とお金

    正社員を辞めて「収入が2倍」に。新法施行に注目が集まるフリーランス、妊娠や出産への懸念を聞いた

  • 恵比寿始発「鉄道雑学ニュース」

    東京メトロは上場でどう変わる? 新線建設、都営地下鉄との一元化…鉄道専門家の見立て