ヒナタカの雑食系映画論 第34回

宮崎駿、新海誠だけじゃない。作家性にあふれた「原作がないオリジナルアニメ映画」の傑作を見てほしい

宮崎駿、新海誠、細田守……原作のないオリジナル企画のアニメ映画の監督は、まだまだたくさんいます。「これだけは見てください!」と心からお願いできる、監督の作家性が強く表れたアニメ映画を4作品紹介しましょう。(C)新見伏製鐵保存会

それ以外のオリジナルアニメ映画もすごい!

それ以外にもオリジナル企画のアニメ映画がたくさんあり、もちろんそれぞれが独創性にあふれています。

・『人狼 JIN-ROH』(沖浦啓之監督):PG12指定でもやや甘い残酷描写のあるハードSF
・『宇宙ショーへようこそ』(舛成孝二監督):大長編『ドラえもん』っぽい子どもたちの大冒険
・『楽園追放 -Expelled from Paradise-』(水島精二監督):遠い未来のSFロードムービー
・『きみの声をとどけたい』(伊藤尚往監督):ミニFMラジオでつながる女子高生たちの青春物語
・『つみきのいえ』(加藤久仁生監督):日本で唯一アカデミー賞で短編アニメ賞を受賞した『カールじいさんの空飛ぶ家』を思わせる回想録
・『バイオレンス・ボイジャー』(宇治茶監督):全編“ゲキメーション”と銘打たれたホラーアクションアニメ
・『夜明け告げるルーのうた』(湯浅政明監督):少年と海の生き物の交流を「ドラッギー」とも言える表現をもって描く
・『アラーニェの虫籠』&『アムリタの饗宴』(坂本サク監督):夢か現実かが分からなくなる不条理系のホラーアニメ
・『グッバイ、ドン・グリーズ』(いしづかあつこ監督):『スタンド・バイ・ミー』っぽい3人の少年のロードムービー
・『HELLO WORLD』(伊藤智彦監督):『マトリックス』的な仮想世界での青春恋愛劇
・『サイダーのように言葉が湧き上がる』(イシグロキョウヘイ監督):ショッピングモールを舞台に展開する青春恋愛劇
・『バブル』(荒木哲郎監督):パルクールに生きる意味を見いだす少年少女のアクションドラマ

これから公開されるオリジナルアニメ映画にも大期待

さらには、これから公開されるオリジナル企画のアニメ映画も見逃せません。
 

『駒田蒸留所へようこそ』(吉原正行監督):2023年11月10日公開。『花咲くいろは』『SHIROBAKO』などのP.A.WORKSによる”お仕事シリーズ”最新作。


『きみの色』(山田尚子監督):2024年公開予定。『映画 聲の形』や『平家物語』の監督・山田尚子、脚本・吉田玲子、音楽・牛尾憲輔という布陣が再集結。
 

『つるばみ色のなぎ子たち』(片渕須直監督):公開日未定。構想に6年を費やした、1000年前の京都を舞台に清少納言が生きた日々を描く物語。
 

いずれも楽しみです。そして、オリジナル企画の映画は、いわば「ゼロから作り上げる」ものであり、創作のエネルギーそのものと、それを成し遂げる尋常ではない労力が必要です。「原作の人気」にも頼れないので、そもそもの企画の成立から難しいでしょうし、全ての過程において膨大な試行錯誤があることもほぼ間違いありません。

だからこそ、これらのオリジナル企画の、しかも多数の人の手がかかった、監督の作家性こそが作品の魅力に直結するアニメ映画を、筆者はひたすらに応援したいのです。それぞれが多くの人に見られること、そして監督の名前も含めてもっと知られることを、心から期待しています。


この記事の筆者:ヒナタカ プロフィール
All About 映画ガイド。雑食系映画ライターとして「日刊サイゾー」「ねとらぼ」「CINEMAS+」「女子SPA!」など複数のメディアで執筆中。作品の魅力だけでなく、映画興行全体の傾向や宣伝手法の分析など、多角的な視点から映画について考察する。2022年「All About Red Ball Award」のNEWS部門を受賞。


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