グルーミングや洗脳から抜け出せない被害者でもある
総じて、ジャニーズ事務所に所属した人間の多くは、性加害のうわさ、いや事実を知りつつも適切な行動ができなかった加害者であると同時に、グルーミングや洗脳から抜け出せない被害者でもあるのだと痛感しました。グルーミングとは、子どもと信頼を築き、性的虐待への抵抗・妨害を低下させる行為。ジャニー喜多川氏から性加害を受けた未成年のタレントがその状況下に置かれたのは、言うまでもなく、「恩義があるから」などの理由です。そのことを問題視できなかった周りの子どもも大人もグルーミングの被害者ともいえますし、子どもの時からのグルーミングが何十年にもわたり、加害者本人が亡くなった後も続いているということではないでしょうか。
社名変更にしても、各タレントにヒアリングすると「ジャニーズの名前を残してほしい」と言う者が複数いたとのことです。前述した通り、「未成年の子どもへの性加害を何十年も続けてきた組織」の名前を残し、存続させる前提で話を進めること自体がはっきり間違っているのですが、そう考えられない人が多くいるということ、それを一部のファンが支持するということ自体、とても恐ろしいことです。
また、東山紀之氏は「タレントが培ってきたエネルギーやプライドがある」ことも社名変更しない理由として語っており、それが仮にグルーミングや洗脳とは異なるものだとしても、そもそも人生を破壊されるほどの苦痛を受けた被害者の訴えと同じてんびんにかけるものではありません。私たちは、そのような「常識」が間違っていることを、強く提言していかなければいけません。
タレントの今後のためにできること
複数の企業がジャニーズ事務所に所属するタレントの契約満了後の更新の取り下げ、CMの起用の見送りを発表しています。具体的な施策の提言がなく、反社会的な言葉が投げかけられた会見を踏まえ、そのような判断がされることは国際社会的に見ても当たり前のこと。「今までできてこなかったことが間違っていた」のだと思います。そして、企業それぞれも「事務所を移籍すればこれまで通りに起用する」ことも明言するべきなのではないでしょうか。この問題に対し「タレントに責任はない」という擁護意見は繰り返されており、実際にその通りだとすれば、やはり変わらないままのジャニーズ事務所のほうに社会全体で「NO」を突きつけることこそが重要であり、それはひいてはタレントを守ること、別の事務所に移籍しての今後の活躍にもつながるはずです。
ファンの方こそ、推しのタレントが起用されることで社会からバッシングされることを望んでいない、誰もが気兼ねなく応援できる環境こそを望んでいるはずです。何より、ファンの方こそが自分の意志で、それぞれのタレントのための行動ができることを、心から願っています。
この記事の筆者:ヒナタカ プロフィール
All About 映画ガイド。雑食系映画ライターとして「日刊サイゾー」「ねとらぼ」「CINEMAS+」「女子SPA!」など複数のメディアで執筆中。作品の魅力だけでなく、映画興行全体の傾向や宣伝手法の分析など、多角的な視点から映画について考察する。2022年「All About Red Ball Award」のNEWS部門を受賞。
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