宮崎駿監督に限らず、世の映画監督には年齢を重ねても衰え知らず、むしろさらに作家性が濃くなったり、作品そのもののとてつもないパワーを感じたりすることもままあります。ここでは、そのように80代&90代になってもなお現役の監督による、その独特の魅力にあふれる最新作を紹介していきましょう。
※以下、日本で映画が公開された時の年齢を記しています。
1:デヴィッド・クローネンバーグ監督(80歳):『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』(現在劇場公開中)
『ザ・フライ』などで知られるクローネンバーグ監督は、精神と体が変容していく様を描く、奇妙でグロテスクな映画を多く手掛けてきたこともあって、良い意味で変態だと称賛されています。
その最新作は「体内で新たな臓器を生み出すショーで成功している男」が主人公となった近未来SF。クローネンバーグのファンですら引いてしまうほどの、ユニークでキッチュな世界観を目いっぱい楽しめる内容となっていました。性的な話題も含め「PG12指定」に収まっていない印象もありますが、慣れてくると心地良いとさえ思えてくるのが不思議です。
2:ダリオ・アルジェント監督(82歳):『ダークグラス』
『サスペリア』などでホラー映画の巨匠と称されるダリオ・アルジェント監督の10年ぶりの新作は、盲目の女性が少年と共に殺人鬼から逃げ惑いつつ戦うサスペンス。ハラハラドキドキの攻防戦が展開する、85分の上映時間で程よくまとまった快作に仕上がっていました。
PG12指定ではやや甘い鮮血が飛び散るショッキングな演出、暗闇を生かした画作りはまさにアルジェント監督印で、そこに全く衰えを感じさせません。サディスティックに人間を追い詰める物語でありながら、だからこそ犯罪によって傷ついた人たちに寄り添う優しさも感じさせます。
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