【連載:AIに負けない子の育て方ーVol.2ー】
私はウェルビーイングな子育てを探究する「マザークエスト」というお母さんのコミュニティを運営しています。そこでお母さんたちとお話をする機会が多いのですが、最近、学校の成績を上げるより、自分が興味を持ったことや、どうして? なぜ? と思ったことに主体的に取り組んでほしいと考えるお母さんが増えているなと感じることが多くなってきました。
また、『成功する子はやりたいことを見つけている 子どもの探究力の育て方』(青春出版社)を出版後、「子どもが、やりたいことが分からない」という声や、「子どもの興味関心を広げ探究力を育てるために、どんな習いごとをしたらいいでしょうか」という質問をいただくことが増えてきました。
習いごとを増やすと、受け身になってしまう矛盾
好きなことややりたいことって、そんなに簡単に見つかるわけではないので、いろいろなことやものに触れて好奇心を刺激する機会があるといいですよね。もちろん習いごともその1つですが、「子どもがやりたいと言うから」といくつも習いごとを掛け持ちし、スケジュールがぎっしりという人も多くなっているようです。
でもそうなると、せっかくやりたいことをしているのに、予定をこなすだけの受け身の姿勢が身に付いてしまうという矛盾も生まれてしまいます。もっと自然に、子どもの興味関心を広げ、主体的に行動する力を育てるためには、何をしたら良いのでしょうか?
そこで今回は、「旅は子どもの脳にとって最高の刺激体験」という旅行ジャーナリストの村田和子さんに、長年の経験から導き出した、旅で子どもの生きる力を育む方法を聞きました。
親のリフレッシュのための旅から、子どもの生きる力を育む旅育へ
村田さんは仕事を兼ねて、現在大学生の息子さんが小さい頃からあちこちに親子で出かけ、9歳のときには日本全国を踏破するほどだったそうです。
そんな村田さんが、初めて子連れで旅に出たのは、息子さんがまだ生後4カ月のとき。自宅のあった横浜から千葉の温泉まで1泊2日の旅でした。
当時は子連れ旅行という言葉もなく、祖父母からも「そんな小さな子どもを連れて旅に行くなんて」と小言を言われるような時代でした。でも、育児生活に疲れていた村田さんは、そんな声を振り払い、車のトランクに必要な荷物をぎっしり詰め込んで出かけたそうです。
行ってみたら、おいしい食事と温泉という非日常につかって、身も心もリフレッシュ。「家に帰ってから、育児を頑張る力をもらいました」と振り返る村田さん。当時、“産後うつ”の問題がクローズアップされていたこともあり、それ以来、お母さんのリフレッシュのための旅を勧めていきました。
息子さんが2歳になる頃、旅に出ていろんな人と接すると、子どもが普段とは全く違う表情を見せることに気付きます。日常とは違う環境に身を置くことが、子どもの成長にも良い機会になっているのではないかと考えるようになり、「単なるレジャーではなく、日常の人生を豊かにする旅」をコンセプトに、意識して子どもを訪れて各地を回り、子連れ旅の情報を発信するようになりました。
当初は、旅先の情報やノウハウが中心でしたが、旅先で出会う人との交流も含めて、旅は子どもの興味関心を広げ、世界を開くチャンスであることに気付いた村田さんは、「旅育」を家族旅行のテーマとして活動するようになります。
確かに、旅先では風景はもちろん、そこに住む人が話す言葉も、習慣も、食べ物も、流れる時間の感覚も、自分が慣れ親しんだものとは全く違うと感じることがよくあります。そんな旅での出会いは子どもの脳に良い刺激となり、そこから興味や関心が広がっていくことは大いにあるでしょう。
また、旅は予定通りにいかないことがよく起こりますが、その際は臨機応変に動かなくてはなりません。そんな出来事を通して、自分にとっての当たり前が通じない世界があることを体感し、子どもなりに自分という存在と周りとの関係を考えるきっかけになる。そんな体験を通して、自分は世界の一部であるということを知ると村田さんは言います。