旅で子どもの生きる力を育むための3つのポイント
「旅育」の目的は、旅を通じて子どもの“生きる力”を育むことと言う村田さんに、親子旅で知っておきたいことを聞きました。
まず旅育で何より大切なのは、親子のコミュニケーションです。
例えば旅先では、親子でいろいろな体験ができるプログラムもたくさんありますが、それはツールであって、参加しただけでは旅育にはなりません。子どもが旅から積極的に学び、生きる力を育むためには、次のことを心に留めましょう。
1.子どもを旅仲間として尊重し見守る
普段は親が子どもに教えるという縦の関係かもしれませんが、旅では親子は一緒に旅する仲間です。フラットな関係を意識すると、自然と子どもにかける言葉も変わり、親自身も旅を楽しむようになります。
そのうえで、「あそこに面白いものがあるよ」「これはなんだろう」というように、自分が気付いたことを子どもに伝えることで、自然に子どもも、見つけたことを教えてくれるようになります。
また、子どもが集中しているときには急かさずに、見守りサポートすることも大切。こんなやりとりを通して、新しいことを学ぶことは楽しいという体験をすることで、子どもの興味関心は広がります。
2.旅の計画や準備は子どもと一緒にする
旅で特に大事なのは事前の準備です。どこに行くのか、どうやって行くのか、そこで何をするのかなどなど、旅の作戦会議を開いて一緒に旅のプランを考えましょう。
家族旅行だからといって、ずっと一緒にいる必要はありません。子どもの年齢によって、計画の進め方は違ってきますが、共通して重要なのは子どもが出した意見を尊重すること。全てを子どもに託すのは難しいので、親が予算や日程を踏まえたうえで複数案を用意して「A案とB案どっちがいい?」というように、選んでもらうといいでしょう。そのときに選んだ理由を聞くことで、子どもの考える力や伝える力も身に付きます。
また理由によっては、新たなC案が候補に挙がるかもしれません。自分も参加して決めたという当事者意識から、旅先でも自立して動くようになり、学びも大きくなります。
3.子どもに役割をお願いする
「大きな声であいさつをする」「電車の乗り換え案内をする」など、どんなことでもいいので、子どもに役割をお願いしたり、目標を設定しましょう。できれば親も一緒に役割や目標を担うと、さらに絆も高まります。
そしてできたら褒める、認めることを忘れずに。でも、旅先では計画通りには進まなかったり、アクシデントが起きたりします。そのときに、うやむやにせず、次にうまくやるにはどうしたらいいかを一緒に考えましょう。大変だったけれどなんとなかったという体験をすることで、変化やトラブルにも強くなり、チャレンジする力を育てます。
親がなんでもお膳立てするのではなく、子どもが「自分でできた!」という経験をすることで、本当の意味での自己肯定感を育むことができます。
旅を子どもの探究力・失敗力を育てるチャンスに
子どもにいろんな体験をさせてあげたいと旅行をする家庭は多いと思いますが、親が計画した旅について行くだけになっているケースは多いかもしれません。
私は、変化の激しい時代に子どもたちが将来に向かって自分らしく進んでいくためには、自分で考え行動する力=探究力と、失敗してもめげずに前に進む力=失敗力を育むことが必要だと考えていますが、まさに、旅はそれらの力を育むチャンスがあふれています。
そして、旅のいいところは、親も一緒に楽しみながら、自然にそんな力を育ことができるところです。旅を子どもの生きる力を育てる旅育にするため、ぜひ上の3つを心に留めて、お子さんと旅に出かけませんか?
短期間の勉強で最難関校に合格! 旅育は学力も育てる?
旅育の成果の象徴でもある息子さんについて、また村田さんの子育てについても伺いました。
息子さんは現在、京都大学の4年生。しかも、小学6年生から中学受験の勉強を始めて、最難関校の1つである栄光学園や、進学を決めた東京学芸大学附属世田谷中学に合格したという逸話の持ち主です。どうしたらそんな子どもに育つのでしょうか?
次回ご紹介します。
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村田 和子さん
旅行ジャーナリスト・旅育コンサルタント。「旅を通じて人・地域・社会が元気になる」をモットーに、旅の魅力を媒体で発信。宿のアドバイザー・講演なども行う。子どもと47都道府県を踏破した経験から「旅育メソッド(R)」を提唱。著書に『旅育BOOK~家族旅行で子どもの心と脳がぐんぐん育つ(日本実業出版社)』。
・村田和子さんの記事一覧はこちら
この記事の執筆者:中曽根 陽子
数少ないお母さん目線に立つ教育ジャーナリストとして、紙媒体からWeb連載まで幅広く執筆。海外の教育視察も行い、偏差値主義の教育からクリエーティブな力を育てる探究型の学びへのシフトを提唱。お母さんが幸せな子育てを探究する学びの場「マザークエスト」も運営している。『1歩先いく中学受験 成功したいなら「失敗力」を育てなさい』(晶文社)など著書多数。