宮崎駿(崎はたつさき)監督の最新作『君たちはどう生きるか』は、7月14日の公開日からわずか4日間で興行収入21億4000万円を突破しました。「“宣伝をしない宣伝”がどちらに転ぶのかは分からない」と以前の記事では書きましたが、その時点でひとまず大成功と言えるのではないでしょうか。
初週は超ロケットスタートだったものの、2週目の成績は半減
とはいえ、2週目での映画興行ランキングでは『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』に抜かれて2位となり、週末3日間(金~日)の興行収入は8億3100万円。公開初週の週末3日間の成績(16億2600万円)と比較すると、約51.1%の興行成績となったのです。大作映画の公開初週から2週目の下降率としては普通、または物足りない数字といえます。そうなったのは、映画の評価そのものが賛否両論であることも原因の1つでしょうが、それだけでもないと思います。
ここでは、公開日当日のTwitterの“仕掛け”で実はトリッキーな宣伝をしていたことを踏まえつつ、その公開初週および2週目の興行成績の理由と、今後の盛り上がりの推測を記していきましょう。
Twitterでのトリッキーな仕掛けの数々
映画『君たちはどう生きるか』は製作委員会方式ではなく、スタジオジブリが100%出資で作り上げたからこそ、「予告編なし」「テレビスポットなし」「新聞広告なし」と、ないないづくしの宣伝を実現できたのだと思われていましたが……公開初日となる7月14日、しかも午前0時に切り替わったタイミングから、とんでもない仕掛けが施されていました。スタジオジブリ公式Twitterのアイコンが“アオサギ”に変わった上に、プロフィールの文が謎の「カヘッカヘッカヘッ」という鳴き声(?)に変わったのです。
同時に、ハッシュタグ「#米津玄師」「#地球儀」「#宮崎駿(崎はたつさき)」「#君たちはどう生きるか」で投稿すると、アオサギの絵文字がついてくることも話題に。この「ハッシュタグフラッグ」のために企業が支払う金額は数千万円に上るともうわさされており、実はしっかり宣伝のためにお金もかけていたのです(ちなみに『アーヤと魔女』の頃から宮崎駿の“崎”は“たつさき”表記へと変わっているようで、「#宮崎駿」ではアオサギの絵文字はつきません)。
そもそも、主題歌の担当に誰もが知る米津玄師を呼んできた時点で、ものすごい訴求力があります。さらには公開日初日から菅田将暉、柴咲コウ、あいみょん、木村拓哉などの(公開前からうわさもされていた)豪華な声の出演者も明らかに。公開直後の感想も相次ぎ、SNSやYouTubeの動画で投稿されたことも手伝って、『君たちはどう生きるか』はトレンドを席巻していたのです。
これらの盛り上がりはネットニュースにもなっており、それまで宮崎駿の最新作が公開されることに気づいていなかった人にも存分に届けられていたことでしょう。さらに、テレビでも公開初日の様子が放送され、仕事を休んで朝一番の回を見た人や、涙ぐみながら“幸福”だと思った人の感想も届けられています。
>次のページ:“出し惜しみ”は吉と出るか、凶と出るか