
牛久大仏や、水戸の納豆などで有名な「茨城県」。皆さんは正しく読めますか?
「あれ……いばらきだっけ、いばらぎだっけ……?」と分からなくなってしまったという人もいるかもしれません。
今回は「茨城」の正しい読み方を、現役アナウンサーの笠井美穂が解説していきます。
<目次>
・「茨城県」における地名の由来
・「茨城」の読み方は「いばらき」と「いばらぎ」のどっち?
・大阪府「茨木」の読み方も「いばらき」
・なぜ「いばらぎ」と読まれるのか
・「宮城」の正しい読み方は「みやぎ」
・「茨城」も「茨木」も正しい読み方は「いばらき」
「茨城県」における地名の由来
まずは、「茨城」という地名の由来を見ていきましょう。茨城県の公式Webサイトには、奈良時代に書かれた『常陸国風土記(ひたちのくにふどき)』の内容が次のように紹介されています。
「城(き)」という言葉には「とりで」という意味があります。「いばらのとりで」がかつて築かれたことから「茨城」という地名になったそうです。黒坂命(くろさかのみこと)という人が、古くからこの地方に住んでいた朝廷に従わない豪族を茨(いばら)で城を築いて退治した。または、その住みかを茨でふさいで退治した。
出典:茨城県公式Webサイトより
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「茨城」の読み方は「いばらき」と「いばらぎ」のどっち?
ではここから本題です。「茨城」の正しい読み方は「いばらき」「いばらぎ」どちらでしょうか。結論から言うと、「茨城」の読み方は「いばらき」です。「いばらぎ」と濁るのは誤りです。
茨城県の公式Webサイトを開くと、トップ画面の左上に県章と「茨城県」の文字がありますが、その下には「Ibaraki Prefectural Government」と表記されています。「Ibaragi」ではありません。また、国語辞典を引いても「いばらき(茨城)」は掲載されていますが、「いばらぎ」という地名は載っていません。
さらに、国土地理院がWeb上で公開している「地理院地図」では、地名の読みが表示される機能がありますが、この機能を使って確認しても、やはり「いばらき」と表示されます。
「茨城」の正しい読み方は「いばらき」であって、「いばらぎ」ではありません。
大阪府「茨木」の読み方も「いばらき」
ちなみに、大阪府には「茨木市」という市があります。大阪の「茨木市」も読み方は「いばらき」です。「いばらき」と「いばらぎ」があるのではなく、「茨城」も「茨木」も、どちらも「いばらき」です。
なぜ「いばらぎ」と読まれるのか
こんなにもはっきりと「茨城」は「いばらき」なのに、なぜ私たちは「いばらぎ」と読みたくなってしまうのでしょうか。そのヒントの1つとして考えられるのが、茨城方言です。『茨城方言民族語辞典』(東京堂出版)によると、茨城方言の特徴として以下のような点が挙げられています。
さらに、こんな解説もあります。カ行やタ行の音が濁音になる(有声化する)ことである。たとえば、
「赤」アガ 「柿」カギ
茨城に住む皆さんは「いばらき」と認識されていると思いますが、方言の性質上、他県の人が聞くと「いばらぎ」と言っているように聞こえてしまうことがあるようです。「茨城」という地名も、地元の人間は「いばらき」といっているつもりなのだが、(中略)よその土地の人には「いばらぎ」といっているように聞こえる。
地元の人が「いばらぎ」と言っている(ように聞こえる)から、「茨城」は本当は「いばらぎ」なんだと覚えてしまった方もいるのかもしれません。
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「宮城」の正しい読み方は「みやぎ」
「茨城」を「いばらぎ」と読みたくなる原因として、もう1つ考えられるのが「宮城県」です。「宮城」は「みやぎ」と濁ります。これは、もともとは濁っていない音で始まる言葉が、他の言葉に結び付くことで濁音になる「連濁」というもので、宮城のほかにも東京の稲城市は「いなぎ」、佐賀の小城市は「おぎ」など、「〇+城(き)」で連濁する地名があります。
こういった地名と混同して、「茨城」も「いばらぎ」と濁るのではないかと考える方もいるのかもしれません。
「茨城」も「茨木」も正しい読み方は「いばらき」
ついつい分からなくなってしまう「茨城」の読み方。「茨木市」と合わせて、どちらも濁らない音の「いばらき」が正しい読み方です。ちなみに、「茨城」が「いばらぎ」と読まれてしまう問題を何とかしようと、地元の茨城新聞は、YouTube上で「さらば『いばらぎ』濁点宇宙発射計画【茨城新聞】」という動画を公開しています。 「いばらぎ」から「゛」が切り取られ、宇宙に追放されるこの動画。1度見れば「茨城には濁点はつかない!」と、迷わず言えるようになるかもしれません。
■執筆者プロフィール

笠井 美穂(かさい みほ)
福岡県出身。九州大学文学部を卒業後、KYT鹿児島讀賣テレビに入社。退社後は、報道番組を中心にフリーアナウンサーとして活動。これまでの出演は、NHK北九州放送局『ニュースブリッジ北九州』、NHK BS1『BSニュース』、NHK Eテレ『手話ニュース』、NHK ラジオ第1『NHKきょうのニュース』『ラジオニュース』など。