「デフォルト」「債務不履行」。言葉の響きからして嫌な感じがするのは筆者だけではないはずです。
今回はアルゼンチン出張帰りのソムリエ・別府岳則氏への取材内容を交えながら、過去8度のデフォルト(債務不履行)を経験したアルゼンチンにおける経済とワインの奇妙な関係を紹介します。
そもそも「デフォルト」とは?
デフォルトとは、平たく言えば「国が倒産すること」です。国は国債という形で、国内外に借金をしていますが、その国債が返せなくなる(=債務不履行)ことをデフォルトといいます。
つまり、アルゼンチンはこれまで計8回も国が倒産したということになります。
「裏レート」の存在
そんなに倒産を繰り返すと、当然国の通貨の信用が低下していきます。結果として、アルゼンチンには「ブルーレート」という裏レートが存在します。
これは、アルゼンチン国内でアルゼンチン通貨であるアルゼンチン・ペソを使うよりアメリカドルなどの海外通貨でやりとりすると、為替レートが全く変わるというものです。
ざっくりブルーレートは通常レートの50%引きくらいのイメージで、アルゼンチン・ペソで支払うと1万円程度のものが海外通貨で支払うと5000円! なんともお得ですね。
今は海外発行のクレジットカードで支払いをすると、ブルーレートに合うように、キャッシュバックする仕組みもある(※1)ようです。
アルゼンチンのワイン産業
金融の話はここまでにして、次はアルゼンチンのワイン産業について見ていきましょう。
アルゼンチンは19世紀初頭にスペインから独立を果たすと、当時強みであった畜産業をはじめ州ごとに注力する畜産物、農産物を割り振っていきました。その中でワイン用のブドウ栽培を任されたのがメンドーサ州とサンフアン州でした。
特にメンドーサ州は今日でも、アルゼンチンにおけるワイン生産量の7割以上の生産を担う巨大産地として成長しています。それもそのはず、ブドウの栽培面積は14万ヘクタール(=1400平方キロメートル)と、フランスの一大銘醸地・ボルドーの10万ヘクタールを超え、世界最大級のワイン産地として広く認知されています。
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