「飲まないビジネスマン」は半人前? 実は過半数が飲まない時代の飲みニケーション新事情

飲めないビジネスマンは半人前。そんな飲みニケーション文化は過去のモノとなりつつあります。飲まない飲みニケーションの可能性と現代における必要性について解説していきます。

あなたはお酒を飲みますか?
 

この質問に対して、統計的には過半数の人が「飲めない」「飲めるけど飲まない」と答えているようです。
 

そんな、お酒と距離をとっている人に知ってほしいお酒の席の新事情を、日本初のノンアルコール専門商社の代表でもある筆者が紹介していきます。
 

いまや「飲まない」人が多数派の時代

「お酒は飲めない」あるいは「飲めるけど飲まない」と答えたあなたは、これまで
 

「お酒くらい飲めないと一人前の社会人とは言えない」
「ビジネスにおいてお酒のコミュニケーションは必須だ」
 

などという言葉に悩まされることもあったかもしれません。
 

しかしデータを見ていくと、そんな価値観は過去のものになりつつあることがわかります。お酒が“飲めない”人、飲もうと思えば飲めるけど“あえて飲まない”という人は(あなたが思っているより)ずっと多いのです。
 

厚生労働省の飲酒頻度調査(令和元年国民健康・栄養調査※)によると、月に一度もお酒を飲む習慣がないという成人はなんと全体の過半数55.1%もいます。8つの選択項目(毎日、週5-6日、週3-4日、週1-2日、月に1-3日、ほとんど飲まない、やめた、飲まない・飲めない)から、「ほとんど飲まない」「やめた」「飲まない(飲めない)」と回答した人の割合の内訳を見ていくと男性38.1%、女性70.3%と、じつに男性の3人に1人以上、女性にいたっては3人に2人以上がお酒を飲む習慣そのものがないという結果。
 

つまり食事の席だから「お酒を飲まなくてはならない」という時代はすでに今は昔、なのです。
 

「飲みニケーション」の3要素

そもそも、お酒がビジネスツールとして成立していた理由を考えると、「飲みニケーション」という言葉に象徴されるように、人と人をつなぎ、関係を構築していくためのツールとして機能していたからでしょう。
 

もう一歩踏み込んで、お酒にそのような力があると考えられているのはなぜかというと、
 

(1)ほろ酔い状態にすることで人を社交的にさせる
(2)さまざまなバックストーリーがあることで話の種になる
(3)食事の味を引き立て、場をより満足度の高いものにする
 

だいたいこのような理由ではないでしょうか? 逆に、これらの要素を満たすものであれば十分お酒の代わりとして成立しうると言えます。
 

進化する「ノンアルコール」の今

ひるがえって、ノンアルコールの最新事情についてお話ししましょう。
 

長らく、ノンアルコールといえば「飲みたいのに飲めない」時に“仕方なく”飲むものとして存在してきました。そんなネガティブオプションであったノンアルコールの潮目が変わってきたのは、ここ7~8年です。
 

お酒を作ってからアルコールを抜く「脱アルコール」と呼ばれる引き算の手法が一般的だったそれまでに対して、果汁や水、ビネガーなどの原液にハーブやスパイス、フルーツなどの素材をつけ込むことで足し算のように味わいや香りを構築していく「オルタナティブアルコール」という、2015年頃にイギリスで登場した新ジャンルがきっかけとなりました。
 

これによって、醸造に加えて脱アルコール設備に投資できる巨大資本しか参入できなかったノンアルコール市場に新興のクラフトメーカーが流れ込みました。
 

さらに、既存の脱アルコールの技術の向上にともない品質も年々向上してきたことで、ノンアルコールは仕方なく飲まれるネガティブオプションという立場から、積極的に飲まれるポジティブオプションへと変容していきました。
 

余談ですが、近年欧米では、若い世代を中心にアルコールとノンアルコールを交互に飲む「ゼブラ飲み」と呼ばれる文化が草の根的に生まれてきているのですが、そうした文化の背景にも業界側の技術革新、品質向上という影響が見て取れます。
 

“飲まない”飲みニケーションの可能性

ノンアルコールの最新動向をふまえて、飲まない飲みニケーションの可能性について考えてみましょう。
 

飲みニケーションは、(1)社交性の向上、(2)話の種になる、(3)食事の味を引き立てる、の三要素が根本にあると前述しました。これらが進化著しいノンアルコールで満たせるのであれば、“飲まない”飲みニケーションは十分可能と言えるでしょう。
 

まず3番目の要因からみていきます。いわゆるフードペアリングという言葉が象徴するようにお酒は食事と一緒に楽しむことで相乗効果的に満足度が増します。
 

ひと昔前のノンアルコールではこの効果はかなり望み薄でしたが、先ほどご紹介したような昨今のノンアルコールは、ハーブやスパイスを用いることでお酒本来が持つ豊かなフレーバーや複雑な味わいが表現されているので、(場合によってはお酒以上の)ペアリングが可能です。
 

2番目のストーリー性ですが、こちらも少量生産のクラフトメーカーの存在や、レストランなどでのこだわりのあるオリジナルドリンクの登場で十分担保できるようになってきました。
 

実際にアルコールとノンアルコールの両方が出ているテーブルで、ノンアルコールの手の込みように興味を持ったお客さんがお酒からノンアルコールに切り替えてペアリングをしていた、なんて話を聞くこともしばしばあります。
 

最後に1番目の、ほろ酔い状態で人をオープンにさせるという要素については「さすがにお酒の特権だろう」という声が聞こえてきそうですが、必ずしもそうではありません。
 

お酒を飲んだことのある人に限りますが、お酒のような味わいや香りのドリンクを飲むことで、まるでお酒を飲んだかのように錯覚する空酔い(からよい)という効果があると言われています。
 

これについては科学的に証明されているわけではないですが、ノンアルコールを飲んで、少し酔っぱらったような気分になった経験をした人もいるのではないでしょうか?
 

ひとつずつ見ていくと、飲まない飲みニケーションというのも決して荒唐無稽な話ではなく、十分ありうる新しい形のように思えます。
 

飲まない飲みニケーションの必要性

冒頭でも触れましたが、飲まない人口が過半数を超えている実情のなかで、飲まない人に向けた飲食店やサプライヤーの注力は間違いなく社会的にも重要です。ですから、
 

「飲めないからお酒の席では肩身の狭い思いをしなくてはいけない」
「自分はウーロン茶しか飲んでないけど、お酒を飲んでいた人たちと割り勘しなくては」
「お酒が飲めないからせっかくのおいしい食事にもジュースで我慢するしかない」
 

といったネガティブな感情を我慢する時代は終わったのです。
 

筆者が日本初のノンアルコール専門商社を起ち上げた理由のひとつもそこにあります。多様性や個性をうたいながらお酒を販売するなかで、過半数を超える飲まない人には数行足らずの“おなじみドリンク”のみというソフトドリンクメニューの現状をどうにか変えていきたいからです。
 

いい意味でアルコールとノンアルコールの垣根がなくなり、どんな人でも満足のいくドリンクライフが送れる日が1日でも早く訪れることを願っています。

※参考:令和元年国民健康・栄養調査(厚生労働省)
 

安藤 裕プロフィール
ノンアルコール専門商社株式会社アルト・アルコの代表取締役。大学在学中にワーキングホリデービザで単身渡仏し、現地の食文化に触れ、以来食分野でのキャリアを志す。海外のトレンドを先んじて取り入れるため日本初となるノンアルコール専門商社アルト・アルコを起業。2021年には『ノンアルコールドリンクの発想と組み立て』を上梓。
 

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