HYBEが目指すのは「エンタメ界のサムスン」であり「韓国発のディズニー」?
ゆりこ:そしてパン議長の話の続きなのですが、「実は世界的に見るとアルバム売り上げもチャートイン回数もSpotifyの再生回数も減少傾向」「韓国の芸能事務所のアルバム売り上げは世界のアルバム市場の2%にも満たない」となかなかシビアな内容でして。
矢野:ここ数年、K-POPに関してはどちらかといえば良いニュースの方が目に入るじゃないですか。ビルボードの何位になったとか、YouTubeの再生数が1億回超えたとか。
ゆりこ:でしょう。だから私は軽くショックでしたよ。無意識にうれしいニュースばかり目に入れていたのかもしれない、と反省もしました。K-POPにハマって15年以上、多少の浮き沈みはあれど大局的には上り調子だと盲信していた部分があった。
矢野:日本を含め、アジア圏ではすでにテッパンのジャンルだと思っていました、僕も。
ゆりこ:アメリカで「BTSが〜」「BLACKPINKが〜」と好意的に報道されていても、実際ビジネスの交渉現場に行くと、まだまだ韓国事務所の立場は弱いのだとパン議長は嘆かれるのですよ。
矢野:つまり「HYBEでさえ北米市場ではまだまだ非力、K-POP人気だって未来永劫じゃない」という主張ですね。
ゆりこ:そう受け取りました。グローバルではいまだユニバーサル ミュージック・ワーナーミュージック・ソニーミュージックの独壇場。たった3社で全体売り上げの約70%を占めているそうです(※5)。だからそこに対抗できるよう、おごらずに危機感を持って変革しないといけないし、“エンタメ界のサムスン”が必要なのだと。
矢野:つまりそれがHYBEもSM買収に動いた理由の1つ、ということですね。確かに以前から僕もHYBEは韓国発のユニバーサル ミュージックやウォルト・ディズニー社のような存在を目指しているのでは? と薄々感じていました。
ゆりこ:今回のパン議長のコメントは“表立って言える部分”で、きっときれいごとだけではないでしょう。ただ、HYBEが抱えている「このままではK-POPが一時代の流行に終わってしまう」「韓国のエンタメ企業はアメリカに行けばいまだ乙の立場」という危機意識に偽りはない気がする。
矢野:今が正念場だというのもうなずけます。こんなにも世界中がK-POPに注目しているタイミングは初めてなわけですから。ここからさらに盛り上がるのか、みんなの思い出となってしまうのか……分岐点ですね。