恵比寿始発「鉄道雑学ニュース」 第64回

2023年デビューで注目の鉄道「新型車両」3選! “宇宙船”や次世代型路面電車、豪華な観光特急も

2023年にデビュー予定の新型車両の中から、注目すべき車両をピックアップしてご紹介しよう。

2023年もわが国の鉄道は新規開業路線や新型車両の話題に事欠かない。その中から注目すべき車両をピックアップしてご紹介しよう。大阪メトロ中央線400系、宇都宮ライトレールHU300形(愛称:LIGHT LINE)、東武鉄道N100系「スペーシア X(SPACIA X)」の3つである。
 

1.  奇抜な前面が話題! 大阪メトロ中央線400系

「宇宙船」をイメージした前面形状がユニークだ (C) Osaka Metro
大阪メトロ(Osaka Metro)中央線は、2025年に予定されている大阪・関西万博のアクセス路線となることから、新型車両の導入に踏み切ったものである。安全性はもとより移動手段としての新機能と高い快適性を求め、「乗って楽しい」デザインとなった。前面は8角形のガラス張りの展望形状で、「宇宙船」をイメージした近未来的な奇抜なスタイルである。
緑は大阪メトロ中央線のラインカラー (C) Osaka Metro

デザインを担当したのは奥山清行氏。JR東日本の豪華列車「トランスイート四季島」、北陸新幹線E7/W7系などのデザインが知られていて、それらの車両以上にインパクトのあるものとなった。
 

車内はロングシートを主体としつつ、地下鉄車両にもかかわらず6両編成中1両だけクロスシート車を連結。目的地に向かって移動するワクワク感や、パーソナルスペースの確保による安心感を提供すると説明している。
 

2023年4月デビューが予定され、既存の20系、24系を置き換える。中央線には2022年夏から30000A系が走っている。これは、万博開催期間中に増加する輸送力を確保するために導入したもので、万博終了後には谷町線に転用することが決まっている。ともあれ、インパクトある400系デビューが楽しみである。
 

2.  稲妻を表現した黄色のシンボルカラーが映える! 宇都宮ライトレールHU300形(愛称:LIGHT LINE)

車両基地に勢ぞろいしたHU300形 (C) 宇都宮市

わが国初となる全線新設のライトレール(LRT:いわゆる「次世代型路面電車」)が宇都宮ライトレールで、何回か開業時期を遅らせていたが、ようやく2023年8月に宇都宮東口停留場から芳賀・高根沢工業団地停留場までの14.6kmが開通する。それに合わせて新型車両HU300形が導入される。すでに車両は完成していて、目下試運転が行われている。
 

車体の外観は「次世代型路面電車」と呼ぶにふさわしい。夏に雷が多いことから「雷都(らいと)」と呼ばれることもある宇都宮だが、「雷都を未来へ」を具現化するデザインとして雷の光(稲妻)を表現するために黄色をシンボルカラーにした。雷を表現する黄色が映えるように流線形の形状とし、「独自性」「雷の光」「先進性」を踏まえたデザインとなっている。

流線形のスマートな車体は魅力的だ (C) 宇都宮市

バリアフリーの車両として低床式を採用。段差がなく、車椅子やベビーカー、重いスーツケースなどもスムーズに車内へ持ち込めるのがよい。3車体連接車で、LRTとしては限度ぎりぎりの車長30m以内に収めた。定員は160人(座席は50席)、路線バスの倍以上のキャパシティーがあるので、混雑時にも威力を発揮するであろう。スマートで近未来的な車両が宇都宮付近を走行する日が待ち遠しい。
 

3. 7月にデビュー! 次世代の東武特急「スペーシア X」

スペーシア Xの完成予想画像 (C) 東武鉄道

東武の看板列車「スペーシア」は、浅草~東武日光、鬼怒川温泉を結び、ほかにはJR新宿駅などから東武線へ直通する列車にも使われてきた。しかしデビューから30年を過ぎ、そろそろ新型車両への取り替え時期がやってきた。
 

そこで、発表されたのがスペーシアの第2世代となるN100系、愛称「スペーシア X」である。目下、日立笠戸工場(山口県)で製造中なので、実車を見ることはできないが、予想画像が公開されているので、それを元に見ていこう。
 

スマートな流線形の車体は、ホワイトボディーで、日光東照宮陽明門・唐門・御本社に塗られた「胡粉(ごふん)」の白をほうふつとさせる高貴な白をイメージしている。沿線の鹿沼市の伝統工芸である組子に用いられる幾何学模様をイメージした意匠を採用。窓枠をはじめ、そこかしこにあしらっている。

コックピットスイートの完成予想図 (C) 東武鉄道

車内は通常の座席に加え、個室、ソファ席やラウンジタイプの席、などさまざまなタイプの座席を用意した。中でも最上級の「コックピットスイート」はプライベートジェットをイメージして前方の窓から展望を広く見渡しながら「走るスイートルーム」としてゆとりあるぜいたくな空間だ。
 

1号車にはコックピットラウンジを設置。カフェカウンターでは、看板商品としてオリジナルのクラフトビールとクラフト珈琲を提供する。これらは、1960年に登場したDRC(デラックスロマンスカー)時代からの飲み物なので、しっかりと伝統を引き継ぎながら進化する豪華な観光特急にふさわしいものとなろう。
 

2023年7月15日から浅草~東武日光、鬼怒川温泉で当面2往復運行、週末を中心に4往復運行日もあり、その後徐々に初代スペーシア(100系)を置き換えていくことになると思われる。わが国の豪華観光列車リストにまた新たな魅力ある車両が加わる。
 

ほかにも、JR北海道の737系通勤形交流電車、JR西日本の京阪神エリアで導入される有料座席サービス新快速「Aシート」の新車両225系4次車なども公表されている。機会があれば、レポートしたい。
 

資料&写真、画像提供=大阪メトロ、宇都宮市LRT企画課協働広報室、東武鉄道
 

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