トヨタの首位脱落も半導体の影響が
またこんなニュースも報じられている。2022年、アメリカでは根強い人気を誇るトヨタの自動車が、販売台数でアメリカの自動車メーカーのGM(ゼネラルモーターズ)に抜かれたという。敗因は、自動車で使う半導体が不足する中で、GMは半導体を確実に確保していたからだという。国際的なビジネスにおける競争でも、半導体に絡む動向が多大な影響を与えるのだ。
ところが最近になって、半導体の需要が減りつつある。コロナ禍で企業は半導体不足を恐れて多くを仕入れて積み上げていたこともあって、今、半導体の需要が下落しつつあり、半導体メーカーなどはそれを受けて今後の動きに頭を悩ませているという。
半導体メーカーや関連企業が喜べない理由
半導体の世界には、「シリコン(半導体)サイクル」と呼ばれるビジネスの流れがある。これは、半導体業界で、成長局面と後退局面が3~4年間隔で交互に訪れ、浮き沈みが起きる現象を指す。そして、そのサイクルで、2023年は後退局面に入ると予想されており、半導体メーカーも関連企業も、ここまでの需要増や、これからコロナ後の経済が活性化する中で需要が戻るのではないかとの予測もあり、この時点で供給を増やすための工場拡大などの設備投資を行うかどうかで難しい選択を迫られている。
先日、筆者が最近話を聞いた日本の半導体部品メーカーの経営者は、このシリコンサイクルと、今後のIoTなどの電子機器などの需要増の予測の中で、工場を拡大するかどうかで悩んでいた。その投資額も、優に億を超えるようなかなりの高額になるからだ。
今後、冒頭で触れたPS5のような商品では半導体不足が解消されてさらなる販売台数の増加が期待できるとのことで、消費者にとっては喜ばしいことだ。だがコロナ禍やアメリカ・中国間の経済摩擦などで翻弄(ほんろう)される半導体メーカーや関連企業は、2023年からビジネスにおいて難しい局面に入る可能性があるのだ。
山田 敏弘プロフィール
ジャーナリスト、研究者。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、アメリカ・マサチューセッツ工科大学(MIT)でフェローを経てフリーに。
国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)、『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)。近著に『プーチンと習近平 独裁者のサイバー戦争』(文春新書)がある。
Twitter: @yamadajour、公式YouTube「SPYチャンネル」
【おすすめ記事】
・2022年に世界&日本で最も使われたパスワード、ダークウェブで実際に流出しているのは……
・“やられっぱなし”の日本人はそろそろ気付くべき、ロシア人スパイによる被害の実態
・サッカー日本代表の活躍で沸くカタールW杯、世界ではなぜ批判されている?
・「iPhoneなら安全」は間違い! 誰もが注意すべきスマホのセキュリティリスクと対策
・トランプ前大統領のTwitterアカウント復活は、バイデン政権に向けたメッセージか