JR九州の観光列車「SL人吉」の牽引機として知られる蒸気機関車ハチロク(8620形)。生まれは大正11(1922)年11月18日なので、まもなく100歳の誕生日を迎える。しかし、さすがに寄る年波には勝てず、2024年3月での引退が公表された。2度の復活という数奇な運命をたどったこのSLについて振り返っておこう。
ハチロク(58654号機)の生い立ちから復活まで
大正時代の名機として貨物用のキューロク(9600形)とともに名を馳せた旅客用のハチロク(8620形)。使い勝手が良かったことから、旧国鉄やサハリン、台湾での機関車も合わせると700両あまりが製造され、全国で活躍した。
8620形は8620が1号機、8621が2号機、8699(80号機)の次は、18620というややこしい付番方法を用いている。ハチロクの435番目に製造された58654は、現在JR九州の所有で、1922年11月18日に日立製作所で誕生、その後、長崎にあった浦上機関区を振り出しに九州各地を転々とし、人吉機関区での仕事を最後に1975年に現役を引退した。
廃車となった後は肥薩線矢岳駅脇にあるSL保存館で静態保存されていたが、JR九州発足後に動態保存機として白羽の矢が立ち、1988年8月に「SLあそBOY」(豊肥本線熊本~宮地で運転)牽引機として復活した。
しかし、急勾配の山岳路線であり、長年の酷使がたたったのか、21世紀に入ると不具合が目立つようになった。機関車の台枠に重大な損傷が発生し、修復不可能と判断され、2005年8月をもって引退した。