「代替」の読み方は「だいたい」「だいがえ」どっちが正しい? 意味や使い方、言い換え

「代替」は現在では「だいがえ」とも読まれますが、本来の読み方は「だいたい」です。日常の会話では「だいがえ」と言っても差し支えないとは思いますが、公の場など正確な言葉遣いを求められる場合は本来の読み方「だいたい」を使った方が無難でしょう。

「代替」の正しい読み方は「だいたい」「だいがえ」のどっち? 
「代替」の正しい読み方は「だいたい」「だいがえ」のどっち? 

大雨や事故の影響などで鉄道が止まったときに、路線バスが振り替えて運行をする「代替輸送」。スマートフォンが故障したときに修理に出すと貸し出される「代替機」。
 

「代替」という言葉は日頃の生活の中でよく登場しますが、正しい読み方はご存じですか?
 

「だいたい」と「だいがえ」、2つの読み方を聞いたことがあるという人もいるかもしれません。今回は「代替」の正しい読み方を現役フリーアナウンサーの笠井美穂が解説していきます。
 

<目次>
そもそも「代替」の意味とは
「代」と「替」の漢字の意味とは
「代替」の読み方は「だいたい」「だいがえ」? 
「替」を「たい」と読む語は少ない
「代替」の読み方、どっち派? 【独自アンケート】
「代替」の類義語
「代替」の読み方は「だいたい」が正確

そもそも「代替」の意味とは

代替の意味は、何かの代わりや代わりの選択肢を指すことです。例えば、商品の代替品は、同じ目的を果たす別の商品を指します。

また、人の代替とは、その人の代わりに同じ役割や仕事をする別の人を指します。

「代」と「替」の漢字の意味とは

「代」と「替」はいずれも「かわる・かえる」という意味を持つ漢字ですが、その意味には微妙な違いもあります。

・【代】
あるものが用いられないで別のものの役目になる、あるものを用いないで別のものの役目をさせることを指します。

(例文)親代わり、主人に代わって、挨拶に代えて


・【替】
それまであったものを同種の別のものにする、それまであったものが同種の別のものになることを指します。

(例文)取り替える、替え歌、替え玉

「代替」の読み方は「だいたい」「だいがえ」? 

国語辞典には「代替」の読み方として「だいたい」「だいがえ」と2通り採録されています。実は、どちらも間違った読み方とは言えません。

「代替」は、本来は「だいたい」と読んでいたものが、言い換えの表現として「だいがえ」とも読まれるようになり定着してきたものと考えられます。

国語辞典のそれぞれの項を見てみると、多くの辞書では、「だいたい」の項では意味の説明があるのに対して、「だいがえ」の項では「だいたいの重箱読み」との説明にとどめられています。

「重箱読み」とは、「重箱」を「ジュウ(音読み)ばこ(訓読み)」と読むように、音読み+訓読みで構成される熟語の読み方のことです。

逆に訓読み+音読みの読み方のことは「湯桶読み(ゆトウよみ)」と言います。

「替」を「たい」と読む語は少ない

「代替」の読みとして「だいがえ」が登場した背景には、「替」を「たい」と読む語が少ないことも関係しているかもしれません。
 

常用漢字表に示されている「替」の一般的な読み方は

 音読み タイ
 訓読み かえる・かわる

ですので、「タイ」という読み方が特殊なわけではありません。
 

ただ、約30万語が採録されている「精選版 日本国語大辞典」(小学館)で冒頭か最後に「替」とつく言葉、300語あまりを確認してみると、「たい」と読む語は「交替」や「献替」、「造替」など15語しかないことが分かります。
 

しかも、その多くが「交替・交代」に代表されるように「代」の字でも表記される言葉や、現代の日常会話ではあまり見かけない語です。
 

こうしたことから、特に現代では「替」の「たい」という読みになじみがない人が増え、「代替」は「だいがえ」と読まれるようになったのではないかと考えられます。

関連記事:慣用読みとは? 慣用読みの一覧や普及された理由をアナウンサーが解説

「代替」の読み方、どっち派? 【独自アンケート】

All About ニュース編集部では、「代替の読み方」についてアンケートを実施しました。

「代替」の読み方、どっち派?
「代替」の読み方、どっち派?

その結果、「だいたい」は67.2%、「だいがえ」は32.2%、「どちらとも読む」は0.6%となりました。

・「だいたい」派の意見

「だいがえとは間違いと習ったことがあります。だいたいとしか聞いたことがありません」(30代男性/千葉県)

「代替案(だいたいあん)で読み方を覚えているので、だいたいを選びました」(40代女性/京都府)

「阪神淡路大震災の時、ラジオで”だいたい”バスと読まれているのをよく聞いたからです」(40代女性/兵庫県)

・「だいがえ」派の意見

「大体と区別するため」(40代男性/大阪府)

「だいたいは馴染みがないから」(20代女性/大阪府)

「正しくは『だいたい』ですが、言葉で伝える場合、だいたいでは分かりづらく、相手方もピンとこない為、誤用とは分かっていても『だいがえ』で読んでいます」(30代男性/神奈川県)

【調査概要】
調査期間:2023年10月20~23日
調査方法:インターネット調査
回答者属性:10~70代の500人

「代替」の類義語

「代わり」を意味する「代替」と似た意味を持つ類義語を紹介します。何度も繰り返し使うことがある場合は他の言葉で言い換えてもいいでしょう。ただし、正確に「代替」と同じ意味を表さないこともあるので、それぞれの言葉の意味はしっかり理解しておきましょう。

・代用(だいよう)
「代用」とは、「あるものを、ほかのものの代わりに用いること」という意味の言葉です。

「代替」のように、「代替する」→「代用する」、「代替品」→「代用品」といった使い方ができるケースが多く、言い換え表現として使いやすいでしょう。

しかし、「代替」は本来のものがない場合に代わりに類似品を使用し続けるという意味で、本来のものがあったとしても代替のものを引き続き使います。これに対し、「代用」とは「本来のものがない場合に一時的に使い、本来のものが使えるようになったら元に戻す」という意味合いが含まれており、若干の意味の違いがあるため、言い換えできない場合もあります。

・代理(だいり)
「代理」とは、「ある人に代わってものごとに対処すること」や、「代わりの人」を意味する言葉です。例えば、「課長代理」などの使い方で、ある人に代わって物事を処理する人を指す言葉として使われます。「交代」や「交替」も使用可能です。

「代替」の読み方は「だいたい」が正確

ここまで示してきた通り、現在では一般的に「だいがえ」とも読まれる「代替」ですが、本来の読み方は「だいたい」です。
 

日常の会話で「だいがえ」と言っても差し支えないとは思いますが、公の場などでより正確な言葉遣いを求められる場合は本来の読み方である「だいたい」を使った方が無難かもしれません。
 

また、「代替え」のように送り仮名がついている場合は「だいがえ」と読むほか、「代替エネルギー」や「代替医療」など、複合語の多くは「だいたい」という読みが一般的ですので、「だいたいエネルギー」「だいたいいりょう」などとする方がよいでしょう。


■執筆者プロフィール

プロフィール写真

笠井 美穂(かさい みほ)
福岡県出身。九州大学文学部を卒業後、KYT鹿児島讀賣テレビに入社。退社後は、報道番組を中心にフリーアナウンサーとして活動。これまでの出演は、NHK北九州放送局『ニュースブリッジ北九州』、NHK BS1『BSニュース』、NHK Eテレ『手話ニュース』、NHK ラジオ第1『NHKきょうのニュース』『ラジオニュース』など。
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