
同じ読み方(発音)で、使われている漢字も似ている言葉は、混同してしまいやすく、正しく使い分けるのが難しいですよね。
なかでも「規制」と「規正」は混乱してしまう方も多い漢字のひとつではないでしょうか?
今回はいずれも「キセイ」と読む「規制」と「規正」について、正しい意味や使い分け方をフリーアナウンサーの笠井美穂が解説していきます。
<目次>
・「規制」とは
・「規制」と「規正」の違い
・「規制」と「規正」の例文
・「きせい」と読むその他の語について
・「規制」と「規正」は意味を理解して正しく使おう
「規制」とは
「規制」とは、ある対象や活動に対して、法律や規則、規定などによって制限や制約を加えることを指します。
規制は、社会や経済の安定や公共の利益を守るために行われる場合があります。例えば、環境規制は、大気や水の汚染を防ぐために、特定の産業や企業に対して排出基準を設けることです。
また、金融規制は、金融機関や市場の安定を確保するために、銀行の資本要件や取引の規制を行うことです。
規制は、公共の利益や安全を守る一方で、経済活動や個人の自由にも影響を与えることがあります。
「規制」と「規正」の違い
「規制」と「規正」には、共通して「規(キ)」という漢字が使われています。
この字には「一定の枠・ルールにはまるようにする」(『デジタル大辞泉』(小学館))という意味があります。そのため、「規制」と「規正」は、規則やルールに従うといった共通した意味があることがわかるでしょう。
規正は、ある基準や規則に従って物事を整えることを指します。具体的には、社会や組織において、行動や活動を規則や法律に基づいて制限し、秩序を維持することを意味します。
規則や法律に従って行動することによって、公平性や安全性を確保し、混乱や乱れを防ぐことが目的とされていおり、個人や組織の行動や活動を制約する一方で、社会の秩序や公共の利益を守る役割も果たしています。
つまり、「規正」には、誤りや悪いところがある場合に、ルールや規則に従って正すことを意味するのに対し、「規制」は、守るべき規則を定めたり、その規則に基づいて制限を加えたりすることを意味します。
「規制」と「規正」の例文
「規制」と「規正」それぞれの具体的な使い方について、例文を紹介します。「規制」の例文
・マラソン大会当日は、交通規制が行われるのでご注意ください。
・会談で、外相は輸出規制の緩和を求めた。
・経済の活性化を目指し、規制改革が進められている。
「規正」の例文
・地元出身の政治家が、政治資金規正法違反の疑いで逮捕された。
・労働環境の著しい不均衡が規正された。
「きせい」と読むその他の語について
「きせい」と読む語は他にも数多くありますが、「規制」「規正」と同じように「規」という漢字を用いる言葉に「規整」があります。
「規整」は、「規律を立てて物事を正しく整えること」(『精選版 日本国語大辞典』(小学館))という意味で「仮名遣いを規整する」「計器を規整する」などのように使います。
ただ、「規整」は主に、法律や経済、科学の分野などで用いられることが多い言葉です。そのため、日常会話で使う機会は少ないかもしれません。
「規制」と「規正」は意味を理解して正しく使おう
「規制」と「規正」は、いずれも「きせい」と読むよく似た言葉ですが、それぞれ意味は異なります。
決まりに従うという点ではどちらの言葉の意味も共通していますが、ルールに従って制限したり統制したりするのは「規制」、誤りを正すのが「規正」です。
漢字の意味を考えると混同しにくいと思いますので、この機会に2つの「きせい」の意味を確認してみてください。
■執筆者プロフィール

笠井 美穂(かさい みほ)
福岡県出身。九州大学文学部を卒業後、KYT鹿児島讀賣テレビに入社。退社後は、報道番組を中心にフリーアナウンサーとして活動。これまでの出演は、NHK北九州放送局『ニュースブリッジ北九州』、NHK BS1『BSニュース』、NHK Eテレ『手話ニュース』、NHK ラジオ第1『NHKきょうのニュース』『ラジオニュース』など。