「ずらい」「づらい」「にくい」正しいのはどれ? 使い方を現役アナウンサーが解説

「分かりづらい」「分かりずらい」はどちらが正しいのでしょうか。とくに「~にくい」「~づらい」「~がたい」の使い分けには悩んでしまう方も多いのでは。どのような違いがあるのか、現役アナウンサーが解説します。

「分かりづらい」「分かりずらい」はどっちが正しい?
「分かりづらい」「分かりずらい」はどっちが正しい?

みなさんは「分かりづらい」と「分かりずらい」の違いをご存じでしょうか? 

筆者がラジオ局のアナウンサーをしていたときに書いていたブログを読んだリスナーさんから、以下のようなメールをいただきました。

「『わかりづらい』と書いているけれど、これは間違いなのではありませんか? つらいと言っているけれど苦しいわけではないでしょう」。

それを読んだアナウンサーの上司からも、「確かにこの状況では、あなたが心情的につらいわけではないから、『~にくい』を使った方が良いわね」と教えてもらいました。

「~にくい」と「~づらい」は「~することが難しい」「~することが困難だ」といった場合に使う表現としては同じですが、どのような違いがあるのでしょうか?
今回はフリーアナウンサーの新保友映が違いについてお伝えしていきます。


<目次>
「分かりづらい」「分かりずらい」正しいのはどっち?
「~辛い(〜づらい)」の意味
「~難い(〜にくい)」の意味
「〜づらい」の正しい使い方と例文
「〜にくい」の正しい使い方と例文
似ている言葉「~がたい」の使い方


「分かりづらい」「分かりずらい」正しいのはどっち?

「分かりづらい」が正しい表記です。

助詞「づらい」は「ずらい」という形で使われることもありますが、一般的には「づらい」が正しいとされています。これは、日本語の音韻的な変化の一つであり、助詞「づらい」が「ずらい」となることは少ないためです。

ただし、方言や個人の発音の違いによっては「ずらい」と発音されることもあるため、地域や個人によっては「分かりずらい」という表現も使用されることがあります。

「~辛い(〜づらい)」の意味

「~づらい」は「~辛い」と書き、『新明解国語辞典』(三省堂)では、以下のように記載があります。
  • (する側の方に)何らかの障害があって、そうしたい(しよう)と思っても思うようにことを運ぶことができない状態。
『三省堂国語辞典』(三省堂)では、次のように説明されています。
  1. ・・・するのがつらい。
  2. 「にくい」の新しい言い方 


つまり、ただ難しいというよりは、その行動をすることによって気持ちや肉体的に負担を感じる、心情的に難しい、申し訳ないというニュアンスが強くなります。

 

「~難い(〜にくい)」の意味

続いて「~にくい」は「~難い」と書き、『新明解国語辞典』(三省堂)では以下のように記載があります。
  1.   そうすることに抵抗感があってできない様子
  2.   仕組みなどの点から容易には実現できない状態


つまり、漢字からも分かるように、その行動を取ることが難しいというニュアンスが強く、しようと思えばできるけれども、上手に、またスムーズにその行為をする、その状態になるのは難しいことを伝えたいときに使います。

「~づらい」と「~にくい」をそれぞれ正しく使うには「~」に入る動詞の使い分けもポイントになります。
 

「〜にくい」の正しい使い方と例文

「~にくい」の方の「~」には、物理的なことや、自分の意志ではコントロールできない動詞が入ります。

例えば「壊れる」「消える」「乾く」といった言葉です。
「壊れにくい」や「消えにくい」「乾きにくい」となり、「壊れづらい」や「消えづらい」「乾きづらい」とは言いません。
 

「〜づらい」の正しい使い方と例文

「~づらい」の方には、話し手側の意図的な動詞が入ります。例えば「言う」「話す」などで「言いづらい」「話しづらい」などと使います。
  
しかし、『新明解国語辞典』(三省堂)の「~にくい」の例文を見てみましょう。
  • 発音しにくい単語
  • まとめにくい

このように、話し手の意図的な動詞に関しては、「~にくい」「~づらい」どちらも使えることになります。

多くの言葉を使って説明しなくても、動詞の後に続く言葉を選ぶだけで、そのときの細かい心情を伝えられるのは日本語の特徴と言えるでしょう。
 

冒頭でご紹介した筆者の経験も、どちらでも間違いではないけれど、使い分けた方がそのときの心情がよりきちんと伝わりやすいということになります。
 

また、「~づらい」には「~にくい」の新しい言い方と辞書に説明があったように、『NHK放送文化研究所』によれば、「~にくい」は10世紀には用例がありますが、「~づらい」は19世紀になってから使われ始めたとのこと。最近は「~づらい」を使う人が増えてきているのかもしれません。
 

似ている言葉「~がたい」の使い方

「~にくい」「~づらい」と同じように使われる言葉に「~がたい」があります。
 
『新明解国語辞典』(三省堂)によると、以下のように記載があります。
  • 「~にくい」「~づらい」はその原因が対象とする事物の側にある、それに対して「~がたい」は、その実行が困難だと思う人の心理的な面に原因がある。

つまり、「~がたい」は、その行動をしようと思っていても心理的にどうしてもできない、というニュアンスになり、ほぼ不可能に近いことも表せます。そして少し硬い、書き言葉的な表現でもあるのが特徴です。
 

よく使われる表現としては以下が挙げられます。

  • 信じがたい
  • 理解しがたい
  • 許しがたい

同じような内容を表す言葉でも使い分けることによって表現が深まります。ぜひ、皆さんも使い分けてみてください。


■執筆者プロフィール

新保 友映
山口県岩国市出身。青山学院大学卒業後、2003年にアナウンサーとしてニッポン放送に入社。「オールナイトニッポンGOLD」のパーソナリティをはじめ、「ニッポン放送ショウアップナイター」やニュース情報番組、音楽番組など担当。2018年ニッポン放送退社後はフリーアナウンサーとして、ラジオにとどまらず、各種司会、トークショーMC、Youtube、Podcastなどで幅広く活動。科学でいじめのない世界をつくる「BE A HEROプロジェクト」特任研究員として、子どもたちの授業や大人向け講座の講師も担当している。

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