役務とは? 読み方は「えきむ」「やくむ」どっち? 意味や使い方を解説

役務とは、「公的な仕事」「他の人のために行う労働・労務・サービス」という意味ですが、業界によっては「役務」の使い方が少し変わる場合があります。IT業界・建設業界における「役務」の意味や、「役務」の使い方、読み方を解説します。

役務の読み方とは? 正しい意味と使い方を現役アナウンサーが解説
「役務」の正しい読み方・意味とは?

「役務」という言葉。公的な文章などでは目にすることもあるかもしれませんが、日常会話で使う機会は少なく、いざ読んでみたときに「えきむ」と読めばいいのか、「やくむ」と読めばいいのか迷ってしまう人も多いでしょう。
 

この記事では「役務」の正しい読み方や意味をフリーアナウンサーの笠井美穂が解説していきます。
 

<目次>
「役務」とは? その意味とは?
ビジネスにおける役務の使い方
「役務」の読み方は「えきむ」が正しい
「役」には「やく」と「えき」の2種類の読み方がある
「役」を「 「えき」と言葉の例
「役務」の英語表現
「役務(えきむ)」の認識を理解して正しく読もう

「役務」とは? その意味とは?

「役務」の意味を辞書で引くと、次のように説明されています。

・公的な仕事。また他の人のために行う労働。 ( 『大辞泉第二版』たまたま)
・誰かのために行う労務やサービス。


形のある物を指す「商品」に対して「役務」という場合は、形のないサービスを意味します。 
 

また、「役務補償」という場合は、物品や現金ではなく、技術や労働を提供することによって、相手に与えた損害を賠償することを意味します。

・IT業界における「役務」の意味
業界によっては「役務」の使い方が少し変わる場合があります。

例えば、IT業界では、人や組織が提供する業務を「役務」という通常の意味に加えて、コンピューターなどの機器がサービスを提供することも「役務」となります。サービスを提供する相手も、人間に限らず、機器やソフトウェアなど、人ではないものの場合もあります。

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・建設業界における「役務」の意味
建設業界には、大きく「建設工事」と「役務」という2つの業務があります。

建設工事とは、工事を請け負い、何らかの物質を加工する作業を指します。

役務とは、物質を加工する以外の業務を指し、具体的には、建物内の清掃や点検・設定、製図、調査、情報処理、ソフトウェア開発などが該当します。建設業界では、役務のことを「サービス」と呼ぶこともあります。

ビジネスにおける役務の使い方

・役務提供型契約
役務提供型契約とは、私法上の概念で、役務(労働サービス)の提供に関する契約をいい、売買、賃貸借と並ぶ主要な契約類型のひとつです。民法で規定されている雇用、請負、委任、寄託のほか、商法上の仲立、問屋、運送などのための契約がこれに該当します。また、不動産取引の仲介(媒介)契約も役務提供型契約となります。

・役務範囲
文字通り、役務を提供する範囲を意味します。

・役務提供

消費税法第2条第1項第8号《資産の譲渡等の意義》に規定する「役務の提供」とは、

例えば、土木工事、修繕、運送、保管、印刷、広告、仲介、興行、宿泊、飲食、技術援助、情報の提供、便益、出演、著述その他のサービスを提供することをいい、弁護士、公認会計士、税理士、作家、スポーツ選手、映画監督、棋士等によるその専門的知識、技能等に基づく役務の提供もこれに含まれる。

とされています。(国税庁:第5節 役務の提供

「役務」の読み方は「えきむ」が正しい

「役務」の読みは「えきむ」です。辞書にもこの読み方しか載っておらず、「やくむ」と読むのは誤りです。
 

先ほどの「役務補償」も「えきむほしょう」と読み、また「役務標章」や「役務賠償」も、「えきむひょうしょう」「えきむばいしょう」と読みます。「やくむ」という読みは、「役」という漢字を「やく」と読むことが多いため誤読されたものと考えられます。

「役」には「やく」と「えき」の2種類の読み方がある

「役」の漢字が使われている言葉では「やく」と読む語の方が多いことは確かです。『大辞林 4.0』で確認すると、「役」が付く言葉は合わせて約330語収録されていますが、このうち「やく」と読む語が250余りと圧倒的に多いことが分かります。
 

ただ、「えき」という読みが特殊なのかというと、そうではありません。普段の生活の中で聞く言葉の中にも「役」を「えき」と読むものはあります。

「役」を「えき」と読む言葉の例

「役」という漢字を「えき」と読む言葉の例をいくつか挙げてみます。

まず、よく使われる熟語に「現役(げんえき)」があります。「ある職務や立場で、実際に活動している」とか、「(高校生の大学受験など)在学中に上の学校を受験する」というような意味で使われます。
 

また、裁判のニュースなどで、「懲役3年、執行猶予5年の判決が言い渡された」というような場合の「懲役」は「ちょうえき」と読みます。懲役刑に服するという意味などで使われる「服役」も、読みは「ふくえき」です。
 

さらに、学生時代に日本史を勉強した方は、戦の名称で「役」という漢字を目にしているのではないでしょうか。「文禄慶長の役」「文永弘安の役」「前九年の役」「後三年の役」などです。戦を意味する場合の「役」も、「えき」と読みます。
 

ちなみに、最初に挙げた「現役」には、一般的に使われる意味の他に「軍隊で、所属部隊に配属されて軍務についていること。またその人」という意味もありますが、軍隊に関する言葉には、「役」を「えき」と読む単語が多くあります。例えば、軍隊に入って軍務につく「兵役(へいえき)」、「現役」に対して非常時にだけ召集される「予備役(よびえき)」、兵役を退く「退役(たいえき)」などです。
 

 「役」を「えき」と読む言葉は数こそ多くはないものの、意識してみると、耳にする機会があるのではないでしょうか。

「役務」の英語表現

「役務」は英語で「service」と表現します。

そもそも「役務」とは辞書にもあったように、形のある物を指す「商品」に対して、形のないサービスを指す言葉なので、覚えやすいですね。

「役務(えきむ)」の読み方を理解して正しく使おう

ここまで示したように、「役務」の正しい読み方は「えきむ」で、「やくむ」という読み方は誤りです。
 

普段使う機会の少ない言葉はいざというときに読み方や使い方に自信が持てないこともあるかもしれません。
 

分からないまま過ごしてしまうのではなく、ぜひ気になったタイミングで確認しながら、正しい日本語を使っていただければ幸いです。


■執筆者プロフィール

笠井美穂
笠井美穂(かさいみほ)
福岡県出身。 九州大学文学部を卒業後、KYT鹿児島讀賣テレビに入社。 退社後は、報道番組を中心にフリーアナウンサーとして活動。 これまでの出演は、NHK北九州放送局『ニュースブリッジ北九州』、NHK BS1『BSニュース』、NHK Eテレ『手話ニュース』、NHKラジオ第1『NHKきょうのニュース』『ラジオニュース』など
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