「写す」「映す」の違いは? 正しい意味や使い方を現役アナウンサーが解説

みなさんは「写す」と「映す」を正確に使い分けられていますでしょうか? よく分からずに、使ってしまっている方も多いのでは。この記事では、それぞれの意味や、正しい使い分け方を現役アナウンサーが解説していきます。

「写す」「映す」の違いは? 正しい意味や使い方を現役アナウンサーが解説
「写す」「映す」の違いは? 正しい意味や使い方を現役アナウンサーが解説

「写真にうつす」「スクリーンにうつし出す」など、日常生活でもよく使う「うつす」という言葉。漢字では「写す」や「映す」の表記があります。
 

この2つの漢字のどちらを使うかで意味が変わってきますが、皆さんは正確に使い分けられているでしょうか?
 

今回は「写す」と「映す」の意味の違いや使い分け方を現役フリーアナウンサーの笠井美穂が解説していきます。

<目次>
「写す」と「映す」の意味は? 
「写す」と「映す」の意味の違い
「写す」と「映す」を使った例文
「写す」「映す」の違いを知って使い分けよう

「写す」と「映す」の意味は? 

国語辞典で「うつす」を調べると、「写す」「映す」そして「移す」などの漢字表記が記載されています。
 

「移す」は、「液体を容器に移す」や、「風邪を移す」「匂いを移す」などのように、何かが元の場所から違う場所に動くことを表す言葉ですが、「写す」や「映す」も、元はこの「移す」と同じ語源から生まれた言葉です。
 

【写す】
1. 絵、文字などをまねて、そのままかき表す。
 模写する。転写する。
2. 形・色あるいは気分・様子などを、絵や文章に表す。
 描写する。
3. 写真やフィルムに収める。映像に残す。撮影する。
4. 他人のやり方・前例などをまねる。ならう。
5. 他人のことばをまねて言う。口まねをする。
 
【映す】
1. 物の形・姿などを他の物の表面に現れるようにする。
2. 映像をスクリーンや画面の上に現す。
 
『大辞林 4.0』(三省堂)

 
「移す」とは違い、「写す」では、対象の物そのものを動かすのではなく、元の物と同じように再現するというニュアンスがあることが分かります。また、「映す」では映像などの元となるものを投影して、目に見える形に現すことを意味しています。

「写す」と「映す」の意味の違い

もう少し詳しく、「写す」と「映す」の意味の違いについて見ていきましょう。

『大辞林 4.0』(三省堂)の説明では、

 「写す」は“もとのままに書く。コピーする。撮影する”の意。
 「映す」は“姿・形を物の上に現す。映写する”の意

とあります。
 
また、『新潮日本語漢字辞典』(新潮社)では、「写」「映」それぞれの漢字について次のような説明があります。

 ・「うつす」で「映す」は光を反射させること。
   画面に映画などの画像を現すこと。
 ・「写す」は本物そっくりに複製を作ること。

 
つまり、風景などを本物と同じように写真に切り取ったり、黒板に書かれた内容をノートに書き取ったりするのは、「複製する」というニュアンスのある「写す」
 

一方で、映像をスクリーンに投影したり、光の反射を使って鏡に姿をうつし出したりするのは「映す」ということになります。
 

例えば、「うつし絵」という言葉がありますが、これは「写し絵」と表記すると「描き表した絵」「似顔絵。写生画」という意味になるのに対し、「映し絵」とすると、「ガラスに描いた絵をランプの光を用いて映写機に映すもの」という意味になります。(『大辞林 4.0』)
 

また、『日本語の正しい表記と用語の辞典 第三版』(講談社)では2つの違いについて、「写す・写る〔物の形をうつしとる〕」「映す・映る〔影や光をうつしだす〕」と説明されています。
 

「うつしとる」と言い換えられるものは「写す」「うつしだす」と言い換えられるものは「映す」と考えるのも分かりやすいかもしれません。
 

「写す」と「映す」を使った例文

最後に、「写す」と「映す」の具体的な例文を示します。
 
「写す」の例文
・旅の記録として、立ち寄った場所は全て写真に写していった。
・休んだ日の授業のノートを写させてもらう。
・目の前に広がる風景を夢中でキャンバスに写し取った。
 
「映す」の例文
・客席が暗くなり、大きなスクリーンいっぱいに映像が映し出された。
・鏡に映った自分の姿はまるで別人のようだった。
・静かな湖面に、雄大な山々の影が映されていた。
 

「写す」「映す」の違いを知って使い分けよう

「写す」と「映す」は、写真や映像など似たようなものを対象に使われることも多い言葉ですので、使い分けに悩む場面もあるかもしれません。
 

本物そっくりに「うつしとる」のは「写す」、光などを使って「うつしだす」のは「映る」と覚えてみてください。

関連記事:覚えておくべき同音異義語の一覧! 間違いやすい同音異義語の見分け方をアナウンサーが解説


■執筆者プロフィール

笠井 美穂(かさい みほ)
福岡県出身。九州大学文学部を卒業後、KYT鹿児島讀賣テレビに入社。退社後は、報道番組を中心にフリーアナウンサーとして活動。これまでの出演は、NHK北九州放送局『ニュースブリッジ北九州』、NHK BS1『BSニュース』、NHK Eテレ『手話ニュース』、NHK ラジオ第1『NHKきょうのニュース』『ラジオニュース』など。

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