世界を知れば日本が見える 第3回

「国葬」中止を求める脅迫メールにも利用か? 匿名通信システム「Tor(トーア)」とは

送信元が不明の脅迫メールが、各自治体に届いている。警察関係者によると「Tor(トーア)を使っているケースもある」という。トーアとは一体どういうシステムなのか。

トーアの仕組みとは? 使い方は2つ

トーアはどういう仕組みなのか(画像はイメージ)

その仕組みはこうだ。トーアに接続すると、意図的に世界中にあるいくつもの接続先(パソコン)を暗号化しながら数珠つなぎに経由していく。そして最後(出口)のパソコンから一般のインターネットサイトに接続すれば、実際とは違うIPアドレスから接続していることにできる。つまり、誰が接続しているのかは分からなくなる。
 

こうした特徴により、トーアには2通りの使い方がある。1つは、トーアのブラウザを使って匿名のまま、私たちが普段使うインターネットのサイトなどに接続する方法だ。そうすれば、サイトの運営者や、冒頭のケースであれば、自治体などは誰がサイトにアクセスしているのかが分からなくなる。
 

もう1つの使い方は、トーアのブラウザだけでアクセスできる闇サイトなどへアクセスすること。いわゆる、ダーク(闇)ウェブと呼ばれる空間だ。そこでは、違法な製品が普通に売買され、サイバー攻撃で奪われた個人情報などもダークウェブ内の闇の掲示板などで売られている。誰がどこにアクセスしているかはもちろん分からないし、誰が闇サイトを運営しているのかもほぼ分からない。
 

もともとトーアは、アメリカのワシントンDCにある米海軍研究試験所(NRL)が、インターネットなどを使って秘密裏に諜報(ちょうほう)活動や捜査などをする目的で研究開発を進めた技術だ。
 

その後、技術は米軍の研究所から民間に引き継がれ、現在では非営利団体のプロジェクトとして運営されている。匿名の通信を確保するトーアは、強権的な国家で検閲をかいくぐるために使われ、独裁国家の反政府活動家らが当局の監視を逃れてコミュニケーションを取ったり、情報収集をしたりするのに重宝されてきた。2010年に始まった中東の民主化運動「アラブの春」でも、民主活動家たちを裏で支えたのは、トーアなどの匿名ネットワークだった。


>次ページ:トーアの運営に関わる人たちが信じるのは
 

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