「対応」と「応対」の違いは? 類語や正しい意味・使い方、例文を現役アナウンサーが解説

「対応」と「応対」同じ漢字を使ったよく似た熟語ですが、それぞれ意味が異なります。「対応」と「応対」の意味の違いや使い方を、具体的な例文とともに解説していきます。

「対応」「応対」の違いはなに? 
「対応」と「応対」の違いは? 正しい意味や使い方、例文を現役アナウンサーが解説

「対応」と「応対」は、同じ漢字を使ったよく似た熟語ですが、それぞれ意味が異なります。

今回は「対応」と「応対」の意味の違いや使い方を、現役フリーアナウンサーの笠井美穂が具体的な例文とともに解説していきます。

<目次>
「対応」と「応対」それぞれの意味とは
「対応」「応対」での意味の違い
「対応」と「対処」で意味の違い
「応対」と「応接」で意味の違い
「対応」と「応対」の類語・言い換え表現
「対応」「対処」と「応対」「応接」の例文
「対応」「応対」など似た漢字は意味を理解して使い分ける
 

「対応」と「応対」それぞれの意味とは

まずは、「対応」と「応対」のそれぞれの意味を確認します。

『大辞林 第四版』(三省堂)によると、

 【対応】 相手や状況に応じて物事をすること。
 【応対】 相手になって受け答えをすること。

どちらも、相手に応じて行動をとるという点では共通していますが、相手がどんなものなのか、また、どういった行動をとるのかに違いがあります。
 

「対応」「応対」での意味の違い

『日本語 語感の辞典』(岩波書店)によると、「対応」は「物事や事態を相手や状況に応じて処理すること」であるのに対し、「応対」は、「人と接した際の受け答えや相手に対する扱い方」を指すとされています。
 

「対応」が人だけでなく物事や状況などに合わせて、ふさわしい行動をとることを意味するのに対して、「応対」は人を相手に、何かしらの受け答えをすることを意味しています(ちなみに、ここでの「人」というのは対面に限ったことではなく、電話やメール、手紙なども含みます)。
 

例えば、「来客に応対する」とも「来客に対応をする」とも言いますが、それぞれ意味が異なります。
 

「応対する」は、受付で名前や要件を聞く、担当ではない者が一時的にやり取りをするなど、来客に対してただ何かしらの受け答えをすることを指します。
 

対して「対応する」は、来客の目的に応じて具体的な行動をとること(例えば、打ち合わせや商談をすすめる、クレーム処理をするなど)を指します。
 

「対応」と「対処」で意味の違い

「対応」と同じように、何かに合わせて行動をする意味の言葉に「対処」があります。対処の意味は、「ある事に対して適当な処置をとること」(『大辞林 第四版』三省堂より)です。
 

ただ行動をするだけでなく、「処置をとる」、つまり状況を判断した上でどう取り扱うべきかを決め、始末をつけるという意味が含まれていることが「対応」との違いです。
 

『類語大辞典』(講談社)では、次のように解説されています。

「対処」がある事態・変化を収拾させる方向で行動することに使うことが多いのに対し、「対応」は必ずしもそうではなく、自分の行動の変化にも用いる。
 

つまり、何かの事態などに応じて、自分自身の立場上ふさわしいと考えられる振る舞いをするのは「対応」、問題の解決や事態の収束のために必要なことを判断し実行するのが「対処」になります。
 

「応対」と「応接」で意味の違い

「応対」と同じような言葉としては「応接」があります。
 

これは「訪ねてきた人を迎え入れて、相手をすること。」(『大辞林 第四版』三省堂)という意味の言葉ですが、応接との違いは、相手に対する態度にあるようです。
 

『類義語使い分け辞典』(研究者印刷)によると、「応対する」は「親切かどうかはともかくとして、義務的に人を取り扱うといったニュアンスがある」のに対し、「応接する」は「相手を客として扱い応対すること」とされています。
 

「応接」は、「応対」に比べると、客を丁重に扱うといったニュアンスが強いようです。また同辞典では、「応接」は直接会った場合にだけ使われるとも指摘されていて、メールや電話などでの対応も含まれる「応対」とは、この点でも違いがあります。

関連記事:正しいビジネス敬語とは? 間違いやすい使い方やメールの言い回しをアナウンサーが解説【例文あり】
 

「対応」と「応対」の類語・言い換え表現

対応の類語には「対策」「対処」「措置」などがあります。応対の類語には「接客」「応接」「受け答え」などがあります。

類語を見ることで、より「対応」と「応対」の意味の違いが分かりやすいのではないでしょうか?

「対応」「対処」と「応対」「応接」の例文

「対応」「応対」、また「対処」や「応接」などは、よく似てはいるものの、意味の違う言葉です。
 

ここからはそれぞれの言葉の使い方を具体的な用例で示します。
 

「対応」の例文

・法律の改正で、企業側も対応を迫られている。
・その件に関しては、速やかに対応いたします。
・想定される事態への対応策を事前に用意する。
 

「応対」の例文

・先日応対していただいたお客様の名前を教えてください。
・マニュアルに沿って応対する。
・彼女の電話応対はとても丁寧です。
 

「対処」の例文

・不当な要求があった場合の対処法を示す。
・急激な円高への対処が必要だ。
・不測の事態にも迅速に対処する。
 

「応接」の例文

・大勢の来客に応接する。
・お客様を応接室にご案内する。
 

「対応」「応対」など似た漢字は意味を理解して使い分ける

「対応」と「応対、また「対処」や「応接」など、同じような漢字を用いて意味もよく似た言葉はたくさんあります。
 

日ごろ何となく使い分けてはいるものの、改めて意味の違いを問われるとはっきりとは分からないこともあるかもしれません。
 

この機会に、あらためてそれぞれの正しい意味や違いを確認し、適切に使い分けてみてください。


■執筆者

笠井美穂
笠井美穂
笠井 美穂(かさい みほ)プロフィール
福岡県出身。九州大学文学部を卒業後、KYT鹿児島讀賣テレビに入社。退社後は、報道番組を中心にフリーアナウンサーとして活動。これまでの出演は、NHK北九州放送局「ニュースブリッジ北九州」、NHK BS1「BSニュース」、NHK Eテレ「手話ニュース」、NHK ラジオ第1「NHKきょうのニュース」「ラジオニュース」など。
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