もちろんその間にも素晴らしい映画がたくさん公開されており、特にアニメ映画は豊作でした。興行面では『シン・エヴァンゲリオン劇場版』『名探偵コナン 緋色の弾丸』『竜とそばかすの姫』『劇場版 呪術廻戦 0』などが目立ちますが、他にも優れた作品があったことをご存じでしょうか。ここでは、筆者の独断と偏見による、2021年アニメ映画ベスト5を紹介しましょう。
5位:『映画大好きポンポさん』
同名のコミックを原作とした作品で、敏腕プロデューサーのポンポさんと、期せずして映画監督に抜てきされた青年、新人の女優が映画作りにまい進していく物語がつづられています。かわいいキャラクターが生き生きと動くアニメのクオリティがものすごく高く、映画作りそのものへの楽しさや葛藤も大いに伝わるでしょう。映画ファンに限らず、人生の選択に迷う全ての人へのエールにもなっていることも素敵です。
4位:『カラミティ』
フランス・デンマーク合作の作品です。実在の女ガンマンであるカラミティ・ジェーンの幼少期を描いており、序盤は旅の一団が「男らしさ」「女らしさ」にとらわれているさまがつづられていて、やがて主人公のジェーンはとある事件をきっかけにたった1人で冒険に飛び出し、性別に左右されない「自分らしさ」を獲得していきます。絵画のように美しい風景にも心を奪われることでしょう。
3位:『さよなら、ティラノ』
人気絵本「ティラノサウルスシリーズ」のアニメ映画作品で、無骨なおじさんのティラノサウルスと、天真らんまんな女の子のプテラノドンが、食料がなくなりつつある厳しい世界で「天国」を目指すロードムービーです。単純明快に楽しめる冒険活劇でありながら、キャラクターの知られざる過去も物語に奥深さを与えています。声優は三木眞一郎、石原夏織、悠木碧、さらに2018年に亡くなった石塚運昇などとても豪華。坂本龍一が『王立宇宙軍 オネアミスの翼』以来33年ぶりに手がける流麗な音楽も必聴です。
2位:『映画クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園』
劇場版シリーズ初の「本格(風)学園ミステリー」と銘打たれた作品です。謎解き要素が面白いだけでなく、超エリート校の「やりすぎた成果主義とランク付け」による分断と差別も描かれており、それがあってこそ「友情」「青春」「多様性」などを絡めたメッセージが際立つという、脚本の完成度が半端なものではありませんでした。しんのすけと風間くんの関係性もとても尊く、映画オリジナルのキャラクターがみんな大好きになれるでしょう。子どもの教育上も素晴らしく、そして大人が感涙できるエンターテインメントとしても理想的でした。
1位:『アイの歌声を聴かせて』
試験中のAIロボットが転校生としてやってきて、ひとりぼっちの少女へ唐突に「今、幸せ?」と聞くことから始まる物語です。このAIがなぜか歌いながら踊り出す場面があるのですが、そのミュージカルの「突然歌い出すのって変だよね」という違和感も逆手に取り、とある「秘密」に結びつく、物語上も重要なものになっていくのが巧みでした。主演の土屋太鳳の声の演技と歌唱力も素晴らしく、中盤の斬新な「ジャズ柔道ミュージカル」のアイデアを実現するアニメのクオリティも最高峰。AIもののSF、ミュージカル、青春物語、それぞれの要素が見事に融合した、アニメ映画の歴史を塗り替える大傑作と断言します。
その他にも、『JUNK HEAD』『漁港の肉子ちゃん』『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』『トゥルーノース』『シドニアの騎士 あいつむぐほし』『劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト』『サイダーのように言葉が湧き上がる』『岬のマヨイガ』『映画 すみっコぐらし 青い月夜のまほうのコ』『フラ・フラダンス』などもアニメ映画ファンの間で評判となりました。
誰もが知るコンテンツの劇場アニメ版ももちろん良いですが、『アイの歌声を聴かせて』のようにオリジナル企画の素晴らしいアニメ映画があることも、ぜひ知って、観てほしいです。
(C)吉浦康裕・BNArts/アイ歌製作委員会
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