Aぇ! group・末澤誠也の主演映画『mentor』がヤバすぎる! 吉田恵輔監督の“底意地の悪さ”の集大成

『mentor』がヤバすぎる映画でした。末澤誠也が演じた役が精神的に未熟、それどころか「子ども」に見える凄まじさや、吉田恵輔監督の「底意地の悪さ」などを解説しましょう。(画像出典:(C) 2026「mentor」製作委員会)

磯村勇斗と綾野剛が表現した複雑な心理

そして、その末澤誠也こと拓海を精神的に支える(?)立場を演じた磯村勇斗と綾野剛も、これ以上は考えられないキャスティングでありハマり役でした。
メンター
(C) 2026「mentor」製作委員会
磯村勇斗が演じる龍之介は、五輪代表を目指すアーチェリー選手。まさに「メンタル」がもっとも大事な競技を選ぶことにも、吉田監督の底意地の悪さを感じます(褒めています)。磯村勇斗の鋭い目に宿っている「危うさ」はアーチェリーの的を「容赦なく」捉えているように見えました。

そして、撮影の1年前からアーチェリーの土台となる体づくりに取り組み、高度なテクニックを習得した磯村勇斗自身の努力も、役に多大な説得力を与えていました。そんな龍之介のメンタルがどのようにブレて、かつ「自身の罪を封印するようでいて」「そんな自分に罪悪感も覚えている」複雑な心理がどう変わるのかにも、注目してほしいです。
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(C) 2026「mentor」製作委員会
そして、綾野剛は3時間におよぶ大やけどの特殊メイクを経て演じた埜本について「撮影中は、彼をどう救い、どう生きられるかだけを考えていました」「私にとって彼との時間は幸せでした」などと、かなりの思い入れも語っていました。

それもそのはず。彼の「加害者を許すどころか友達にもなってしまう」心理は、その事実だけを捉えれば異常に思えますが、それに至る彼なりの「積み重ね」があることも、徐々にわかってきます。「彼の気持ちをたくさん想像できましたし、彼に対する私自身の答えも見えました」と語る通りの、複雑な埜本の心理を、観客もまた想像できることでしょう。

綾野剛と磯村勇斗それぞれの末澤誠也への称賛の言葉

そんな綾野剛と磯村勇斗は、今回の末澤誠也との共演について以下のようにもコメントしています。

綾野剛「瞬発的な、もっと言えば本能的に出てくる、監督の演出や相手の芝居を受け取るキャッチの仕方、対応するまでの早さ、誰もが納得するような安心感とともにセリフを放つ--。その力は末澤さん自身の特性で培ってきたものですし、そこには末澤さんが普段から仕事や仲間やファンの皆様に対してどのように接しているのかということがとても顕著に表れているようで、ひとつひとつをとても大切に丁寧に向き合われていました」

磯村勇斗「末澤さんは“受ける”お芝居が非常に上手だなと感じたので、この二人の関係性はきっと上手く進んでいくだろうなと。実年齢は2歳しか違わないのですが、可愛い弟のような感じもあって、これを機に仲良くさせていただければなと思っています」

前述したように、末澤誠也が磯村勇斗と綾野剛にしがみつくように挑戦したことが、劇中の役とシンクロしている……のですが、やがて劇中での3人の関係は「もはや生き地獄」のような様相を呈していきます。それでも、演じた俳優たちの実際の思いは(当たり前ですが)まったく別物だと頭に入れておけば、見る側もなんとか平常心を保てるのかもしれません(?)。

吉田監督の“底意地の悪さ”の集大成

吉田監督は、これまでの作品でも「人間の見たくもないいやらしさを真正面から見せる」ため、その極端さに笑ってしまいそうになるも、同時に「多くの人に思い当たること」でもあるので、「もうやめてくれ! こんなしんどいことを、しかも身に覚えがあることを見せないでくれ!」と叫びたくなる作家性を持っていました(褒めています)。

さらには、吉田監督の作品の多くで共通するのは「折り合いのつかなさ」。過去の罪や、将来の選択について、「これでいいんだ」と満足できなかった人たちの苦悩が丹念につづられており、それが「痛々しい喜劇であり悲劇」に昇華されていること、それこそが底意地の悪いエンタメ性につながっていたのです(褒めています)。
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(C) 2026「mentor」製作委員会
今回の『mentor』では2人の青年が15年前に起こした火事が、人を殺してしまった、人生を台無しにしてしまったため、はっきりとセリフとしても「折り合いのつかなさ」が語られています。

その折り合いにどう決着をつけるのか、あるいはつけないのかも、吉田監督の映画を見る時の醍醐味(だいごみ)と言えますし、今回のとある涙腺決壊必至の場面は、その作家性が極まった集大成とも言えるでしょう。

余談ですが、『mentor』の「小学生時代の罪」を克明に描き、心がえぐられるような衝撃的な映画体験ができることは、絶賛の嵐となっているアニメ映画『我々は宇宙人』にも通じています。しかも吉田監督が同作にコメントを寄せており、両者を見比べれば、他にも共通点を見出せるのかもしれません。

実は吉田監督の「誠実さ」が表れている?


※以下より、ラストの具体的なネタバレはしていませんが、その付近の「印象」については語っています。未見の方はご注意ください。

そして……今回の『mentor』で吉田監督の底意地の悪さがありありと表れたのは、中盤の「絶句する」ほどのネタバレ厳禁の展開と、そしてラストにあります。それぞれを詳細に書くことはできませんが、それは「良い話だけに回収したりしないから!」という、吉田監督作品にある誠実さそのものだと思うのです。

底意地が悪いと何度も記していましたが、それは裏を返せば、人間の卑近さやどうしようもなさを真剣に捉えている、ということでもあるでしょう。
メンター
(C) 2026「mentor」製作委員会
それでも、筆者個人は、ラスト付近の、とあるとんでもない光景を見て、劇中の人物とほぼ同じリアクションをしてしまいました。それは、磯村勇斗演じる龍之介が、拓海と埜本が一緒にアーチェリー競技を観戦している光景を見た時の、「ブホォッブハッ」という笑い声にもならない戸惑い、いや今までにない感情だったのです。

末澤誠也というその人が、アイドルという職業に就いていることをメタフィクション的に示している、良い意味で悪意のある仕掛けとも言えるのかもしれません。そのため、筆者個人は「末澤誠也のファンの方、大丈夫ですか……?」と心配にもなってしまいました。

そんなわけで、「やっぱり吉田監督は底意地が悪い!」と言いたくもなるのですが、それこそが絶対に忘れられない映画体験に結びついているのですから、やはり文句ではない(?)のでしょう。ぜひ、最後まで笑うに笑えない(のに笑うしかない)、極上のエンタメを楽しんでください。

※吉田恵輔監督の吉は「つちよし」が正式表記。
ヒナタカ
この記事の執筆者: ヒナタカ
映画 ガイド
All About 映画ガイド。雑食系映画ライターとして「ねとらぼ」「マグミクス」「NiEW(ニュー)」など複数のメディアで執筆中。作品の解説や考察、特定のジャンルのまとめ記事を担当。2022年「All About Red Ball Award」のNEWS部門を受賞。 ...続きを読む
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