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「普通は分かる」を、伝わる言葉にする
箸かフォークか。事情の説明より、謝罪が先か。こうした戸惑いに共通するのは、日本人が説明しなくても通じると思っていることが、必ずしも相手に伝わっていないという問題です。日本で働くのだから日本人と同じように振る舞え、と言うだけなら簡単です。しかし、理由を示さずに従わせても、初めての場面において自分で判断できるようにはなりません。教える側も、普段は意識しない習慣を言葉にする必要があります。
ラメス君に必要だったのも、「パスタにはフォーク」と覚えることだけではなかったはずです。一般的にはフォークを付けるけれど、箸を好む人もいる。迷ったら、こう尋ねればいい。そこまで分かれば、次の客の希望にも対応できます。
日本語や日本の文化を学びたくてレジに立っている人が、分からないことで怒られ、自信を失ってしまう。それは、教える側の工夫で減らせるはずです。客の側も、希望と違う物を渡された時には、「フォークをお願いします」と伝えることができます。
日本の客の「当たり前」は、外国人スタッフにとって、これから知ることでもあります。「普通は分かるだろう」で終わらせず、その普通を言葉にして渡す。パスタに添えられた一膳の箸は、私たちにその必要を教えてくれるのです。 この書籍の執筆者:村尾信一 プロフィール
1967年大阪生まれ。セブン‐イレブン・ジャパンに30年間勤務し、店舗指導の責任者やお客様相談室など幅広いマネジメントを歴任。2025年の退職後は(株)Hands UP取締役として若手育成に携わる傍ら、執筆活動を展開。『鈴木敏文の遺言』『店長、パスタに箸をつけたらお客様がキレました。』など著書多数。



