その一方で、「あの店員さんを褒めてあげてほしい」という電話もあります。
私、村尾信一は、セブン‐イレブンのお客様相談室の仕事に携わってきました。実話をもとにした私の新刊『店長、パスタに箸をつけたらお客様がキレました。コンビニで働く外国人たちと店主一家の23年』(飛鳥新社)で描いた事例も交えながら、普段は見えない電話の向こう側をお伝えします。
※本記事で紹介している商品の購入やサービスの利用により、売上の一部がオールアバウトに還元されることがあります。
お客様の声が集まる部署は、社内でどう見られているのか
買った商品に問題があった。店の対応に納得がいかなかった。そんな時、本部への連絡先を調べたことがある方もいるでしょう。その窓口となるのが、お客様相談室やカスタマーセンターです。商品やサービスについて案内し、苦情の内容を確認する。受け付けた情報を店舗や担当部署へ伝え、解決や改善につなげていく仕事です。
小売業には、お客様との問題はまず店で解決する、という考え方があります。店員や店長が直接お客様と向き合い、その場で対応することが重視されてきました。そのため、かつてのお客様相談室は、店で収まらなかった苦情を引き受ける部署と見られがちでした。
私自身、お客様の声をもとに改善を提案しても、部署ごとの事情や組織の壁に阻まれ、もどかしい思いをしたことがあります。
私が知るある小売企業では、お客様相談室は窓のない地下室に置かれていました。現場の仕事になじめなかった社員や、健康上の事情で配置転換された社員、定年後に嘱託として再雇用された社員などが、主に配属されていたのです。
もちろん、そうした経歴や事情が、相談室の仕事への適性を決めるわけではありません。問題は、お客様の声を受け止める専門部署として、会社がどれだけ重視していたかということです。
一方、ある化粧品メーカーを訪ねた時、コールセンターの職場環境に驚かされました。ガラス張りの開放感あるフロアに席が並び、どの席からも東京の景色を一望できたのです。
クレーム対応というストレスの大きい仕事を担ってもらっているからこそ、少しでも気持ちよく働けるようにしたい。そうした社長の配慮によるものだと聞きました。
会社がお客様相談室をどう位置づけているかは、そこで働く人への待遇や職場環境にも表れます。
以前、ローソンでカスタマーサポート部門の改革を進めた稲葉裕二さんに話を聞きました。
稲葉さんが目指したのは、お客様の声を商品開発や経営の改善に生かし、相談を受ける部署の役割を広げることでした。取り組みが進むと、その部署への異動を希望する若手社員も増えたといいます。
ローソンは、お客様の要望を受けて担当部署が改善し、その結果をホームページで報告する仕組みを公開しています。
お客様相談室に届いた声を、会社の中でどう扱うか。それによって、この部署の働きがいも、商品や店が変わる可能性も違ってくるのです。
商品の在庫確認から、見過ごせない異物混入の連絡まで
では、お客様相談室には、実際にどんな電話がかかってくるのでしょうか。新刊『店長、パスタに箸をつけたらお客様がキレました。コンビニで働く外国人たちと店主一家の23年』では、その現場を、谷本亜矢さんという担当者を通して描きました。
本書に登場するお客様相談室が受ける電話は、1日およそ300件。メールを含めると、600件近くにのぼります。
「店員の態度が悪い」
「商品の量が写真より少ない」
「弁当に髪の毛が入っていた」
「キャンペーン商品が買えなかった」
ほかにも、駐車場で転んだ、店舗に電話をしても出なかったなど、内容はさまざまです。
電話の半分ほどは、ホームページの案内で解決できる質問でした。
「この商品は、どの店で売っていますか」
「ワンピースとのコラボ商品は、いつ発売されますか」
「近所の店に在庫があるか、調べてください」
ただ、お客様がその情報にたどり着けるとは限りません。どこを見ればよいか分からず、電話で直接尋ねたい人もいます。お客様相談室は、そうした疑問にも一件ずつ対応します。
一方、「お弁当の中に金属片が入っていた」といった連絡は、緊急に関係部署へ共有すべきものです。詳しい状況を確認し、商品の安全に関わる問題として、調査や対応につなげなければなりません。
電話が鳴った時点では、内容も緊急性も分かりません。日常的な問い合わせの中に、重大な問題を知らせる声が交じっている。それを聞き取り、必要な部署へ確実に伝える判断も求められるのです。



