※本記事で紹介している商品の購入やサービスの利用により、売上の一部がオールアバウトに還元されることがあります。
食べ過ぎてはいけない
あたり前のことではないか、と言われそうであるが、これが守れないことが多い。つい付き合いや見栄で、オーバー摂取になってしまう。
70代前半の男性だと、まだまだパワフルで食欲を誇示する人が多い。よくそういう人から焼肉を誘われる。そこいらの焼肉屋だと断るのであるが。
「予約半年待ち」などという言葉につられ、何度か足を運んだ。すると出てくること、出てくること。カルビなんかも、よく言う、
「火をつけると燃え上がりそう」
脂肪のつきよう、残すのがイヤ、というよりも、肉で異様にハイになる仲間からはずれたくない、という気持ちになりつい食べ過ぎて次の日具合が悪い、ということになる。
そう、年をとってくると仲間はずれになるのがコワい。若い時、皆で飲んだ後、誰かが言う。
「締めのラーメンに行こう!」
少しも食べたくない。あんな脂っこいラーメンはまっぴらだと思うのに、よく六本木の裏道の店に行った。年をとってもあのようなことは起こる。
「焼肉行こう」
「トンカツ行こう」
ノリが悪いと言われても、はっきりこう言う。
「年とったから、油っこいものはもう遠慮します」
焼肉やトンカツを食べないからといって疎遠になるのはそれだけの仲なのだ。
私は太りやすい体質のうえに、食べることが大好き。食べることには相当のお金を遣ってきたと思う。私の願いは、いつまでも自分のお金で、好きなものを、好きなように食べたいということ。
とはいえ、めっきり食べる量は減った。私はこの頃、お店の人にはっきりと言う。
「量を減らしてください」
「パスタはいりません」
その分、若い人に食べてもらうようにしている。そして手をつける前に、
「私の分、半分とって」
と頼むようにしている。最近はこういうのをフーハラ、フードハラスメントと言うらしいが、残りものをイヤイヤ食べさせるわけじゃない。自分が箸をつける前のものを、
「よかったら食べてくれませんか」
と聞くわけだ。いりませんと言われたら、あ、そうで終わり。たいていの若い男性は「喜んでいただきます」と言ってくれる。
こちらがご馳走するのだから、フードなんたらにそれほど気を遣わなくていいのではないかというのが私の考えである。
安いものでいいから、若い人たちにはご馳走する。そしてその空気を楽しむ。
もっとお金があったら、どこかのスポーツのクラブ員を焼肉屋に誘い、とことん食べてもらいたいと夢見る私である。
この書籍の執筆者:林真理子 プロフィール
1954年、山梨県生まれ。82年エッセイ集『ルンルンを買っておうちに帰ろう』が大ベストセラーになる。86年『最終便に間に合えば』『京都まで』で直木賞、95年『白蓮れんれん』で柴田錬三郎賞、98年『みんなの秘密』で吉川英治文学賞、2013年『アスクレピオスの愛人』で島清恋愛文学賞、20年、菊池寛賞、22年、野間出版文化賞を受賞。18年、紫綬褒章を受章。22年、日本大学の理事長となる。



