オンライン予備校の普及により、場所を問わず有名講師の授業を受けられる時代になりました。一方で、少子化や学校推薦型選抜・総合型選抜の拡大など、予備校を取り巻く環境は大きく変化しています。
教育ジャーナリスト・小林哲夫さんは著書『予備校盛衰史』(NHK出版新書)の中で、予備校業界が直面する課題と今後の展望を考察しています。
同書より一部抜粋・編集して、予備校の未来を読み解きます。
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有名講師がオンライン予備校に集結
個々の予備校がどれだけ勢いがあるかを知る上で、講師の活躍度は目安になる。
かつてスター講師は三大予備校、東進ハイスクールに集まっていたが、昨今ではオンライン予備校(ネット予備校とも称される)でよく見かける。
オンライン予備校の「ただよび」で世界史を教える鈴木悠介氏はその背景について次のように話す。
「より多くの受験生に教えたいという思いがあります。時間を有効に使いたいという現実的な事情もあるでしょう。有名講師が教えていることによって彼らが所属するオンライン予備校が注目される側面はあります」
もちろん、既存の大手予備校はオンライン授業に力を入れてきた。だが2010年代以降、オンラインに特化した予備校が注目を集めるようになる。学費が安かったからだ。これは、校舎運営の必要経費(家賃、維持費、人件費)を大幅に抑えられることによる。
低価格でスター講師の授業を受けられる時代に
通学型のいわゆるハコモノ予備校の学費は1カ月4~5万円、年間80~100万円が相場だが、オンライン予備校は安いところだと月額1万円程度。ハコモノ予備校の4分の1~5分の1程度におさまってしまうのだ。
これだけ安く、しかもスター講師の教えを受けられるとあって、受験生から熱く支持される。全国各地に立派な校舎をたくさん作り、莫大な経費をかけている予備校にすれば、授業料では勝負にならない。
オンライン予備校は、(1)授業配信、(2)ライブ授業配信、(3)個別指導(面接、添削などを含む)に分かれており、(1)のみ、また(1)と(3)の組み合わせなどのサービスがある。
前述の安価な授業料は(1)または(2)の話である。オンライン予備校のなかでとくにインパクトが大きかったのは、スタディサプリ(スタサプ)、学研プライムゼミ、「ただよび」だった。
少子化で問われる予備校の生き残り戦略
オンライン予備校は受験生から選ばれるためにスター講師を集め、受講しやすい価格を設定することが最優先課題になる。スター講師の奪い合い、価格競争が始まっている。
質の高い授業が無料または格安というサービスに勝つために、受験産業として付加価値をどこにおくか。受講料が低廉であるだけに、コストに見合うアイデアが問われる。
一方、三大予備校、東進ハイスクール(対面クラス)、鉄緑会、地方予備校は、講師1人対不特定数生徒という学校型教室運営を続けるべきかどうかという問題に向き合わざるを得なくなっている。
そこには少子化と入試の変化(後述する学校推薦型選抜、総合型選抜の普及)が深くかかわっている。少子化には根本対策がない。クラスは年々減っていくだろう。2022年、駿台は神奈川県内のあざみ野校、藤沢校を閉鎖したが、受験関係者のだれも意外には思わなかった。
2020年代のうちに、三大予備校の校舎のいくつかは撤退に追い込まれるだろう。これ以上“地上戦”にこだわってリアルな授業を続けるのが得策ではないことは経営陣もわかっている。
活路を空中戦に求めたところで、ネット予備校がひしめく市場に参入するのは容易ではない。ネットでも対面でも、斬新な教育オプションを考案して、現役生、浪人生の区別なく顕著な合格実績を出せるシステムを作るしかないのだ。



