情報ゼロの国へ小6息子と2人で──教育移住先に「ジョージア現地校」を選んだ母の6年

小学6年生でジョージアへ移住した息子は、現地校でジョージア語と英語を学びながら、自分の意見を伝える力を育てていきました。親子が振り返るジョージアの首都・トビリシへの教育移住、そのリアルを紹介します。(画像出典:写真AC)

語学力よりも「世界の見え方」──ジョージアが親子にくれた最大の学び

——生活費は、日本と比べていかがですか?

来た当初は物価も家賃もとても安い国でした。ところがロシアによるウクライナ侵攻のあと、ロシアなどからの移住者が一気に増えたことで状況が一変し、一時は家賃が2倍から3倍に跳ね上がって大変でした。今はその頃よりは落ち着いていますが、移住当初ほど生活コストが安い国ではなくなりましたね。

家賃も生活費も全部込みで考えれば、東京よりは若干安いと思いますが、日本の地方都市とはあまり変わらないかもしれません。

——移住して6年、振り返って一番よかったと思うことは何でしょうか?

ジョージアは陸続きの国なので、右を見れば中東、左を見ればヨーロッパ、上はロシア。地政学的にとても重要な場所だと暮らしているとよく分かるんです。

息子も「世界がどう動いてきたのか」「今を知るには昔を知らないと」と、オスマン帝国の話にまでさかのぼって歴史を勉強したり、自分で考えたりするようになりました。トルコにもかつてジョージアだった地域があるよ、というような話を遠足や授業で学んで、視野がぐんと広がった。

これがアジア圏だったら、日本を含めたアジアのなかのことしか分からなかったかもしれません。ジョージアにいると、アジアも中東も踏まえたうえでヨーロッパやアメリカを見ることができる。

世界から見た日本、世界が今どう動いているかを息子自身が考えられるようになったのは、この先の人生にもつながるとても貴重な財産だと思っています。

英語の授業で歴史について学んだ際の記録
英語の授業で歴史について学んだ際の記録

——実際に、いろいろな国の人と関わる環境なのでしょうか?

トルコ人、ウクライナ人、アルメニア人、アゼルバイジャン人……本当にいろいろな民族の方が暮らしています。ヨーロッパからの観光客も多いですし、最近はアメリカや中国の影響もさまざまな面で、生活のなかに入ってきているのを感じますね。

——お子さんの今後の進路は、どのように考えていますか?

私たち両親は当分ジョージアにいる予定ですが、息子は別の国の大学への進学を考えています。今のところヨーロッパへの進学を考えていて、この夏に大学見学へ行って決めようかというところです。

日本の大学は考えていないようですね。就職のときに日本企業はありかな、とは言っていますが。

今は英語ができるので、ヨーロッパには英語で授業を受けられる大学が多く、選択肢が広いんです。ジョージアから海外の大学を目指すこと自体は、心理的にも物理的にもハードルは高くない印象です。

——最後に、これから教育移住を考えるご家族へ、伝えたいことはありますか?

もし「英語を身につけさせたい」という一点だけが移住の目的なら、ジョージアは最適な選択ではないかもしれません。

英語を学ぶこと自体はもちろん可能ですが、それだけを目的に来ると、わざわざこの国を選ぶ意味を見失ってしまう気がします。授業はジョージア語で行われますし、英語だけなら、もっと環境の整った国が他にあるからです。

ジョージアへの教育移住が向いているのは、いろいろな国や文化にルーツを持つ友達ができることを楽しめて、英語を中心に学びながら「ジョージア語にも少し触れてみたい」と思えるご家族だと思います。

勉強や学歴のためというより、家族で人生を楽しみ、世界を実際に見て回りたい——そんな価値観を持つご家庭であれば、ジョージアは想像以上に豊かな時間をくれる国だと思います。

とりわけ、いずれヨーロッパへの移住や進学を視野に入れている方には、自信を持っておすすめできます。私たちが移住した2021年当時は、ビザなしで1年間滞在でき、就労も自由でした。治安もよく、親日的で子育てもしやすい国だと信じています。

ただし2026年に入って制度が変わりつつあり、就労目的の滞在には許可が必要になるといった動きもあります。最新の条件は、必ず在ジョージア日本国大使館などで確認してください。

いずれにしても、ヨーロッパへの第一歩を踏み出す入口として、これほど条件のそろった国はそうありません。日本からの教育移住の選択肢として、ぜひ知っておいてほしいと感じています。

取材後記

取材を通じて強く印象に残ったのは、竹内さんが日本語の情報がほとんどない国へ、小学6年生の息子と二人で先に飛び込んでいった思い切りのよさでした。

教育移住といえば、情報の集めやすさや日本人コミュニティーの厚さを頼りに行き先を選ぶのが一般的です。先人の記録をたどれる国を選ぶ家庭が少なくないなかで、竹内さんはむしろ「まだ誰も多くを語っていない国」へと舵を切りました。出発点にあったのは「英語を話せるように」「世界に友達を」という、どの家庭にも覚えのあるシンプルな願いでした。

そのうえで、たどり着いたジョージアで息子さんが手にしたものは、その願いをはるかに超えたものでした。アジアとヨーロッパ、中東が地続きに交わる土地で多様な人々と日々関わるうちに、世界の動きを自分の頭で考えられるようになったといいます。

どの国を選ぶかは、子どもがどんな景色のなかで育つかを選ぶことでもある——あえて情報のない国を選んだ竹内さんの6年は、その当たり前のようで見落とされがちな事実を教えてくれます。

勉強や学歴のためだけではなく、家族で人生を楽しみ、世界を実際に歩いて確かめるための移住。竹内さんの選択は、「教育移住」という言葉がカバーする可能性を、確かに広げているように思いました。

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この記事の執筆者: 塾選 ジャーナル
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