口頭指導は無駄。元メガヒット起業家が語る、指示待ちの若者が“自走し始める”たった一つの仕掛け

「BAGEL & BAGEL」創業者・林浩喜さんが教壇で実践する、若者の主体性の引き出し方とは。口頭での説教は無駄、受け身の姿勢を劇的に変える「現場の実体験」と、AI時代を生き抜くための真の行動力に迫る。(画像出典:PIXTA)

問われるのは「何を知っているか」ではなく「どう動けるか」

授業では、現場で見聞きしたことをもとに、学生自身が改善案や事業案を考えます。年によっては、実際に事業化を視野に入れて取り組むこともあります。

林さんが最も手応えを感じるのは、最初は『自分には関係ない』と受け身だった若者たちが、現場に触れることで劇的な変化を遂げる瞬間です。

「最初から『起業したいです』と言って入ってくる学生は決して多くありません。多くは会社員や公務員の両親の元で育った“起業”という生き方を考えたこともない学生たち。でも、自分で課題を見つけ、仮説を立て、提案を当事者に伝えるというプロセスを経験すると、『自分にも社会を変える力があるかもしれない』という感覚が芽生えていくんです」

実際に、林さんの授業をきっかけに、過疎地域の高齢者支援事業を立ち上げたり、地元の中小企業の発信を支える会社を起業したりする若者も現れています。

しかし、林さんは何も「全員が起業家になれ」と言っているわけではありません。本当に大切なのは、どんな組織や地域に行っても「自分で課題を見つけ、自分で最初の一歩を踏み出せる人」になることです。

「『まず自分で動き始める』という姿勢は、起業家だけでなく、企業の中で働く会社員であっても最強の強みになります。AIが普及し、知識や情報を簡単に得られる時代だからこそ、問われるのは『何を知っているか』というより、『自分でどう考え、どう動けるか』というところが重要なんです」

「夢がない」なら、本気で探せばいい

学生たちと向き合う中で、林さんは「夢や目標が明確に定まっていない若者も少なくない」と感じているといいます。将来何をしたいのか分からない、やりたいことがまだ見つかっていない——。そんな停滞感を抱える人々に向けて、林さんは「夢がないなら、探せばいい」と力強いエールを送ります。

「最初から明確な夢を持っている人ばかりではありません。私だって、起業したいという思いはありましたが、最初からベーグルをやろうと決めていたわけではありません。いろいろ探して、悩んで、考え行動し続けたから見つかったんです。夢は、待っていれば突然降ってくるものではありません。人に会う、現場へ行く、本を読む、旅して知らない世界に触れてみる。そうした行動を重ねる中で、実は自分の中にひっそり内在する『本当にやりたいこと(ダイヤの原石)』に気づいていくものです。それが夢につながっているのです」

そして、林さんが講義の最後に必ず伝える強烈なメッセージがあります。

「私たちは誰もが、いつか必ず人生の終わりを迎えます。それがいつなのかは誰にも分かりませんが、その確率だけは100%です。立ち止まっている時間は実はどこにもない。そのときを迎えたときに、自分は『後悔しない生き方を選択できたか』を、今この瞬間の自分に問い掛けてほしいんです」

失敗しないことを優先して立ち止まる人生もあります。一方で、たとえうまくいかなくても、自分で選び、自分で動き、自分なりの道筋をつくっていく人生もあります。

130店舗のベーグルチェーンを築き上げた男が、今、次の世代へ手渡そうとしているのは、華やかな成功法則ではありません。「答えを待つ前に、まず現場へ行くこと」「分からない中でも、自分の足で一歩を踏み出すこと」。そして、「夢がないなら、本気で探してみること」。

その小さな一歩の積み重ねが、やがて自分の人生を自分でつくる力になっていくのかもしれません。
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社会企業大学 学長/周南公立大学 経済経営学部 特任教授 林弘喜さん
社会起業大学 学長/周南公立大学
お話を聞いたのは:林浩喜さん
社会起業大学 学長。神戸大学経済学部卒業後、住友商事に入社。米国コーネル大学ホテル経営大学院修了。帰国後、日本初のベーグル専門店「BAGEL & BAGEL」を創業し、累計130店舗規模まで成長させる。現在は社会起業大学学長として、社会課題をビジネスで解決する人材の育成に取り組む。
廣田 美絵子
この記事の執筆者: 廣田 美絵子
大手化粧品会社で人事部にて採用・教育・広報を担当。その後教育系のベンチャー企業を経てフリーランスで取材・編集・執筆を行う。キャリアコンサルタントでもあり、人のキャリアや生き方にフォーカスした記事執筆を得意とする ...続きを読む
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