科学的? プラセボ効果? 「着ただけで疲れが取れる」リカバリーウエアがここまで人気になったワケ

近年、「着ただけで疲れが取れる」といううたい文句で、リカバリーウエアが人気を集めている。ここまでの市場規模となった背景にあるのは、「2つのブーム」ではないだろうか。詳しく解説していこう。

サウナブームで広がった「ととのう」概念

一体どういうことか、まずは「サウナブーム」というものを振り返ってみよう。

サウナ愛好家によれば、今のサウナブームは「第3次」だそう。2016年に漫画家タナカカツキさんの『サ道 心と体が「ととのう」サウナの心得』(講談社文庫)が注目を集め、2019年にテレビドラマ化されたこのあたりに、有名人やインフルエンサーがこぞって「サウナー」を名乗り始め、世の中に「ととのう」という概念が広まっていった。

「ととのう」とは一般的に、「サウナ、水風呂、外気浴」の「温冷交代浴」を1セットとして数回繰り返すことで得られる、言葉では説明できない「多幸感」を得られる体験のことを指す。血管の拡張・収縮により自律神経が刺激され、副交感神経が優位になるとともにエンドルフィンなどの脳内物質が分泌されることで、この体験が生じるのだという。体への負荷も高いため、十分な注意を促す声もあるが、体調にあわせて適切に利用することで、睡眠の質が向上したり、体や脳の疲労回復に役立ったりするという報告もある。

つまり、2016年から2019年ごろにかけて盛り上がったサウナブームで「ととのう」という概念が普及したことによって、「血流を良くすると疲労が回復する」というイメージも社会に広まったのである。これが「リカバリーウエア」の疲労回復というマーケティングに大きな追い風となることは言うまでもない。

リライブが捉えた「商機」とは

それがよく分かるのが2018年4月に発売された「リライブ」だ。同社が2018年2月に発表したプレスリリースには「着るだけで身体能力が上がるシャツを開発(特許出願済)『リライブ・シャツ』 4月より発売へ」とある。この宣伝文句からも分かる通り、実は当初はパフォーマンスを上げる「パワースーツ」的な訴求で、介護現場で働く人たちの作業負担軽減を主な目的としていた。

しかし、2023年6月に発表したプレスリリースでは「着るだけで効果のある『機能性シャツ』で身体の不調を軽減し、地域を元気に!」と、現在のリカバリーウエア的な打ち出し方へとシフトチェンジしていく。

この当時、テレビやYouTubeではサウナーたちが「ととのう」ことの魅力、疲労回復効果を訴えていた。先ほど述べたように「血流を良くすると疲労が回復する」考え方が広く世に広まっていた時だ。つまり、このトレンドを「商機」と捉えて、「体機能を強化する服」から「疲労回復する服」へと進化させていったというのは容易に想像できよう。

最後の一押しとなったのは大谷現象

そうして2019年からスポーツ・健康市場全体でリカバリーウエア熱が徐々に高まっていくなかで、最後のひと押しとなったのが「大谷現象」である。

大谷選手が体調管理・パフォーマンス向上の秘訣(ひけつ)として実践しているのが「10時間睡眠」である。2017年からは寝具メーカー「西川」が大谷選手と睡眠コンディショニングサポート契約を締結、同社のマットレス「エアー」は2025年までに売上が2倍になった。

そんな「睡眠リカバリー」のトレンドと「疲労を回復する機能ウエア」というトレンドが互いに影響を与えるようにして現在のリカバリーウエア人気はつくられた。「ブーム」というのはいくつかの異なる動きが重なって起こるものなのだ。
窪田 順生
この記事の執筆者: 窪田 順生
ノンフィクションライター
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経てノンフィクションライター。また、報道対策アドバイザーとしても、これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行っている。 ...続きを読む
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