象徴天皇に求められる「正統性」
日本国憲法第一条には、「天皇は、日本国の象徴であり、日本国民統合の象徴である」と明記されています。
では、もし国民のなかに「この人は認められない」という声が一定数存在するような天皇が現れた場合、国民の意見が真っ二つに分かれて、深刻な分断と対立を生むことにならないでしょうか。さらにいえば、その天皇ははたして「日本国民統合の象徴」といえるでしょうか。
日本は世界でも稀にみるほど治安のよい国であり、政治的にも安定しています。政権が交代しても戒厳令が敷かれるようなことはなく、平和裏に政治が継続されています。しかし一部の国では、選挙のたびに混乱と対立が起き、場合によっては王が出てきて仲裁に入るというような事例も見られます。
だからこそ、日本のような安定した社会においても、非の打ちどころのない存在——誰もが敬意をもって受け入れられる天皇の存在は、ふだんは意識されないとしても、国家の根幹を支える重要な柱なのです。
女性天皇が招く「皇室の終わり」
この観点から見ても、皇位継承においては「男系男子による継承」という原則をいかに維持するかを真剣に検討すべきです。私はそうした理由から、女性天皇には一貫して反対の立場をとってきました。
実際に、皇族のなかからも同様の懸念が示されています。「お髭の殿下」として知られた三笠宮家の寬仁(ともひと)親王殿下は、皇族としては異例ともいえるかたちで、女性天皇に対して公に反対の意志を表明なさいました。
殿下は「あえて火中の栗を拾いに行っているような嫌いがあります」とご自身の発言の重みを語りながら、女性天皇は最終的に女系天皇につながる危険があるとし、「それはすなわち皇室の終焉(しゅうえん)を意味する」と明言なさいました。
殿下のご発言は、単なる私見ではなく、長く皇統を担ってきた皇族としての責任と覚悟に裏打ちされたものであると、私は深く受け止めています。
この書籍の執筆者:竹田 恒泰 プロフィール
作家、実業家、皇學館大學非常勤講師。1975年、旧皇族・竹田家に生まれる。明治天皇の玄孫にあたる。慶應義塾大学法学部法律学科卒。専門は憲法学・史学。『語られなかった皇族たちの真実』(小学館)で第15回山本七平賞受賞。2021年に第21回正論新風賞受賞。『天皇の国史』(PHP研究所)、『現代語古事記』『古事記完全講義』『竹田恒泰の特別講義 天皇と皇族』(以上Gakken)など著書多数。近年は、歴史教科書の執筆・出版、古墳型墓所の設計・販売なども行っている。



